第10話

ジェードの手の力が緩んだのを機に、私はナイフを握る手から力を抜いて落とす。



「ジェードを殺すなんて、私に……出来るわけ、ないでしょ? だって……私だってっ、ジェードが大切なのにっ……」



口を開けば開く程、涙は溢れて止まらない。



「セレア……泣かないで……ごめんっ、ごめん……」



頬を両手で包み込み、流れる涙を唇で掬って拭う。



顔中に優しいキスがたくさん落ちる。



「セレアっ、セレア……」



「んっ……ぁ……ふっ、ン、ぅっ……」



唇が塞がれ、息をする為に開いた唇の間から、ジェードの熱い舌がぬるりと侵入してくる。



舌を絡め取られ、巧妙な動きに翻弄される。



両手が完全に自由になっていないから、身動きが取りにくくて、呻くしか出来ない。



「ん、ゃっ……」



ワンピースのようになった服のスカートの部分から、スルリと手が侵入して足を撫でてくる。その手が想像より冷たくて、体を震わせた。



これから何が行われるのかくらい、私にも分かる。



だけど、あんなジェードを見てしまったら、拒む事なんて私には出来なかった。



これは、同情だろうか。



それとも、何か別の感情なのだろうか。



私が抵抗しないからか、ジェードの行動がエスカレートし始める。



ボタンを外され、肌が露になる。



「セレアは着痩せするんだね……知らなかったな」



下半身だけが下着で隠れている状態で、羞恥に拘束されたままの手で顔を隠す。



「ほら、駄目だよ。そんな可愛い顔を隠しちゃ……」



興奮を隠す事なく、うっとりしたような顔で私を見下ろして、やんわりと私の腕をどかす。



「はぁ……ほんとに君は可愛いなぁ……」



首元から鎖骨へ、そしてその下へゆっくりと指をなぞらせていく。



それだけなのに、物凄くいやらしい事をされたかのような感覚に陥る。



「こんな風に君に触れられる日が来るなんて……幸せ過ぎて死にそうだ……」



先程までの絶望を迎えたみたいな表情が嘘みたいに、幸せそうに言う。



「……流れる様に美しい髪も、俺を誘うように揺れる瞳も……」



そんなに私に触れる事が嬉しいものなのだろうか。



「赤く熟れた果実のようで、小さくて可愛らしい声を奏でる唇も、この滑らかな白い肌も、抱いたら折れそうなこの細い肩も腰も、控え目に膨らむお尻も、細くて魅惑的なこの脚も……」



「ンっ……」



言葉を並べながら、その部分を大切そうに手で撫でていく。



「柔らかくて綺麗な形の胸も、その胸で美味しそうに主張するこの先端も……」



「あぁっ……」



撫でるように触られ、優しくなぞられ続け、少しずつ敏感になっていく体に、初めて感じる痺れのような感覚に、我慢する暇がなく声が漏れる。



胸の突起を舐め上げた後に、唇に挟んだり、含んで吸い付いたりされたら、そんな快感に慣れていない私には、刺激が強すぎてどうしようもなくなってしまう。



「ゃ、あっ……」



「んんっ……はぁ……何? ンっ、こっちも……して欲しいの?」



唇を離して、反対の胸にも同じように刺激を与え始める。



ジェードの舌が触れる部分がジクジクと疼き、体の中心が切なくなって、脚を擦り合わせる。



ジェードが与える快感と熱で、頭が働かなくて、快楽に飲まれていく。



「あっ、だ、だめっ……やぁ……」



下着が脱がされて、脚を開かされて空気に触れた場所に、ジェードの顔が埋まる。



「はぁ……君は全てが綺麗で、可愛くて……たまらないな……」



「な、にをっ……ああぁっ!」



他人に見せるような場所ではない、自らの秘部を見られるだけではなく、あろう事かジェードはそこへ舌を這わせたのだ。



信じられなくて混乱してしまって、私は逃げるみたいに抵抗するけど、力強いジェードの腕の力によって、脚を抱えるように付け根を持って固定され、逃げ道を塞がれてしまう。



「あー……君のここは、どうしてこんなにも俺を甘美に誘ってくるんだろう……はぁ……ずっと舐めて、啜って、食らいついていたいよ……ンんっ……」



「や、だめっ、ジェー、ドっ、あっ、ンっ……」



両手が別々には動かないけど、辛うじて動かすのは出来るから、その手で目いっぱいジェードの頭に伸ばして髪に触れる。



けれど、力は入らなくて添えるだけになってしまう。



「んっ、ん……はぁ……駄目と言いながら、君のここはどんどん甘くて濃い蜜が溢れて、止まらないよ? でも安心して……俺が全部飲み干してあげるから……」



美味しいわけなんてないのに、ジェードは心底嬉しそうに「美味しいよ」と味わい続けている。



突起を舌先で転がし、舌全体で舐め上げ、唇に挟んで吸い付いて、それだけでも体が異常な程快楽に痙攣しているのに、先程から中に指が何本か侵入し、中で蠢き掻き混ぜる。



「中が俺の指に吸い付いて、もっとっておねだりしているよ? んっ、はぁ……いやらしいね……」



甘く囁くみたいに言って、ジェードは楽しそうに笑う。



喘いで体をくねらせるしか出来ない私の体の奥から、ずっと味わった事のない波が押し寄せては消えて。



「やっ、ジェードっ、だめっ、なのっ……何、かっ、来ちゃ、ぅっ……からぁっ……指っ、やだっ、だ、だめっ、だめだめだめだっ……あっ、やぁっ、やああぁあっ、あぁああぁっ!」



狂ったみたいに頭を振り、高く声を張り上げて体に自然と力が入る。



今までで一番大きな波が、私の体に迫り、巡る。



浮かせて暴れて逃げる腰を、ジェードがしっかり押さえつけ、私は喉を引き攣らせて背を反らした。



ビクビクと痙攣が収まらない体と、小さく「ぁっ」と漏れて乱れる荒い息。



「上手にイケたね……偉いよ……」



そう言って再び私の上に覆い被さったジェードが、愛おしそうに微笑んで、私の頬を撫でた。

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