第3話

元々異性に耐性を持たない私は、彼の行動一つ一つに振り回されっ放しだ。



「ジェードは気にしなくていいのっ! 内緒なんだからっ!」



「はいはい、承知致しました、お姫様」



柔らかい笑みに、同じ歳なのに子供扱いされているようで、少し悔しい気持ちになる。



とにかくいつもの感謝も兼ねて、何か贈りたい。



しっかり彼を観察しなければ。



というか一つ疑問なのは、私が起きる前にはもう起きているし、眠るまで執事というものを休む事がない上に、休暇を取っている所も見た事がなかった。



「ねぇ、ジェード。そういえば、貴方いつ休んでるの? ちゃんと休めてる?」



「心配しなくても、セレアが休んだ後にちゃんと休んでるよ」



そうは言うものの、どう考えてもあまりに休みの時間がない気がするんだけれど。



「そうか、これだわっ!!」



「と、突然どうしたの?」



私が叫んで立ち上がったからか、ジェードが驚きに目を開いた。



「休みよっ! ジェード、休みなさいっ!」



「……は?」



「お休みをあげるから、ゆっくり休んでっ! 何日欲しい?」



勢いよく迫る私に、目をパチパチ瞬かせている。



ため息混じりに、ジェードが口を開く。



「休みは必要ないんだけどね。たとえ休みを貰ったとして、君は一人でどうするの?」



「ふっ、ふっ、ふっ……それに関しては、ご心配に及ばないわっ! 私だって、ジェードに頼ってばかりではないという所を、見せてあげますっ!」



気合いを拳に込めて、ジェードに見せる。



ジェードはクスリと笑って、口を開いた。



「それは少し寂しいね。君の世話が出来ないなんて」



本当に寂しそうに、私の髪を指に絡めて口付ける。



「そ、そんなに? うーん……」



困った。喜んで貰おうとした事が、裏目に出てしまった。



悩む私に、ジェードはある提案をする。



「そんなにたくさん考えて、何かくれるって言うなら、一つだけお願いを聞いてくれるかい?」



これがジェードからの、初めてのお願いだった。



何を言われるのか、ワクワクしながらジェードを見る。



「俺と、デートしてくれる? と言っても、街に行くくらいだけど」



ニコリと笑ったジェードの笑顔は、照れたような、いつもとは違う、年相応のそれだったからか、こちらまでつられて笑ってしまう。



そんなこんなで、ジェードの誕生日の日に、二人で出掛ける事になった。



二人で出掛けるなんて、初めての事に少しワクワクしている。

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