第2話

相変わらずジェードに世話をされながら、自堕落な生活をしている私ですが、平和です。



あっという間に月日は流れ、私とジェードは十八になりました。



「欲しい物?」



「ええ。何かない?」



私の誕生日は少し前に終わり、勿論盛大なパーティーも開いてもらった。



そこでアレアド様とカイシュ様に出会った。



彼等は、主人公であるレティア姫を取り合う、中心人物達だ。



セレアには関連する人物達だけど、今の私には全く関係はないので、社交辞令一杯で接したのは自覚してる。



正直、私はあの恋愛抗争に巻き込まれるのはごめんだ。



私はもっと平和に生きて行きたい。



「欲しい物と言われても……」



難しい顔で悩むジェードの顔を見つめ、今か今かと答えを待つ。



けれど、思ったような答えは帰って来なかった。



「あるにはあるけど、決して手には入らないから」



そう言ったジェードの表情が、少し悲しそうに見えたのは気のせいじゃないはずだ。



「そんなに難しい物なの?」



「そうだね」



まるで、貼り付けたような笑顔で答える。



彼はどんな物を求めているのか、凄く気になる。



「教えても、もらえない?」



「いくらセレアでも、これだけは聞けないな」



爽やかな作り笑顔を見せた。こういう笑顔を向ける時は、彼の間に壁を感じる。



これ以上は入ってくるなと言われているみたい。



いまだに、この壁は私ですら壊せないでいる。



少し、寂しくなる。



「セレア、そんな悲しそうな顔をしないで。君の気持ちは凄く嬉しいんだよ。ありがとう」



頬に指を滑らせて、額にキスをし、優しく微笑んだ。



この笑顔には、癒し効果があるのだろうか。綺麗だから、見惚れてしまう。



「じゃぁ、いつか、教えてね。約束よ?」



「……そんな日が、来るといいんだけどね」



ジェードは困ったように笑ったけれど、決していいよとは言ってくれなかった。



それでも、私は彼に何かあげたくて、頭を巡らす。



ジェードが席を外している時を見計らって、メイドのレニータを呼んで、相談する。



「そうですね。彼はセレア様が大好きですから、セレア様が考えてくれる物でしたら、何だって喜ぶと思いますわ」



母の様に綺麗な笑顔で微笑むレニータに言われ、また悩む。



難しい。



よく考えたら、彼は私の隅々までを熟知しているのに、私はジェードの事を何も知らない。



という事で、私は乏しい頭をフル回転させて、考えた。



ジェードが身に付けている物や、普段使っている物に注目する。



ジェードは執事だから、常に身につけている物をよく観察していると、たまに見る懐中時計が気になった。



「ジェード、それって大切な物なの?」



「これ? そうだね。執事見習いでここに来る時に、父がくれた物だよ」



それは駄目だ。



他の物を考えないといけない。



「セレア、何を企んでるの?」



「へっ!? べ、別に企んでないよっ!」



私の隠し事が下手くそなせいか、彼が私に詳しすぎるのか、探りを入れられてあたふたしてしまう。



「あはは、本当にセレアは可愛いね」



彼がこんなに笑う姿は珍しいので、なかなか貴重だ。



普段見る事がないから、無邪気な笑顔にドキドキしてしまう。

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