第5話 星の神殿の試練
エリンたちが山々を越え、ようやく星の神殿の入口にたどり着いた時、夕暮れの光が神殿の石壁に反射して、不気味な雰囲気を漂わせていた。古代の神々が残したこの神殿は、遥か昔に封印され、今では誰も足を踏み入れたことがないとされている。
「ここが、星の神殿か……」
エリンは目の前の巨大な扉を見上げながら、胸の鼓動を感じていた。扉には古代の文字が刻まれており、青白く輝く石が埋め込まれている。その輝きは、エリンが手にしている星の剣と同じものだった。
「この神殿には、星の剣を覚醒させるための試練が待っているわ」
セリナはそう言いながら、エリンの隣に立ち、目を閉じた。そして、静かに呪文を唱えると、扉に埋め込まれた石が強く輝き始めた。
「準備はいいか、エリン?」
エリンは深呼吸をし、頷いた。カイも短剣を握りしめて、警戒を怠らない。
扉がゆっくりと開くと、中から冷たい風が吹き抜けてきた。神殿の内部は広大で、古代の彫刻や壁画が薄暗い光の中に浮かび上がっている。エリンたちは一歩一歩、慎重に神殿の奥へと進んでいった。
神殿の中心にたどり着くと、そこには巨大な石の祭壇があった。その上には、エリンの剣と同じような形状をした剣が石に埋め込まれていたが、それは黒く染まっていた。闇の力に浸食された剣だった。
「あれが、闇の剣か……」
カイが低い声でつぶやく。セリナも神妙な表情で、その剣を見つめていた。
「星の剣が覚醒するためには、あの闇の剣と向き合わなければならないの」
セリナはエリンに語りかけた。「闇の剣は、かつて星の勇者に挑んだ者の残したもの。その力を浄化し、君が試練を乗り越えることで、星の剣は完全な力を取り戻す」
エリンは一歩前に出て、星の剣を手に祭壇に向かって立った。その瞬間、神殿全体が震え、闇の剣が黒い霧を放出し始めた。霧は渦を巻き、やがて人型をした闇の戦士の姿を形作った。その目は冷たい光を放ち、エリンに向かって鋭い声で叫んだ。
「星の剣を持つ者よ、我を倒し、この力を受け継ぐ覚悟があるか?」
エリンは剣を構え、恐怖を感じながらも一歩も引かなかった。戦士の力は圧倒的だったが、彼は自分が選ばれた理由を知るため、この試練を乗り越えなければならないと理解していた。
「来い!」
闇の戦士が一瞬でエリンの前に現れ、重い一撃を繰り出した。エリンは剣で受け止めたものの、その力に押し戻され、膝をついた。カイが短剣を抜いて助けようとしたが、セリナが彼を制止した。
「これは、エリン一人で越えなければならない試練よ」
カイは悔しそうにその場に立ち止まり、エリンの戦いを見守るしかなかった。
エリンは再び立ち上がり、星の剣を両手で握りしめた。彼の体に再び青白い光が走り、剣が輝き始める。彼は心の中で、セリナの言葉を思い返した。
「星の剣は、お前の心と共鳴する。恐れず、勇気を持って進むのよ」
エリンは深呼吸をし、戦士に向かって突進した。二人の剣が激しくぶつかり合い、火花が散った。闇の戦士の一撃は重く、エリンは何度も押されそうになったが、彼の剣に宿る光が戦士の闇を少しずつ打ち消していった。
やがて、エリンは闇の戦士の隙を見つけ、星の剣を振り下ろした。剣から放たれた光が戦士を包み込み、戦士の姿は徐々に消えていった。
「……よくやった、エリン」
闇の戦士の声が消え、彼は完全に浄化された。そして、闇の剣もその役目を終えたかのように黒い霧と共に消えていった。
神殿の静寂が戻り、エリンは息を切らしながら剣を収めた。カイが近づいてきて、肩を叩いた。
「やるじゃないか。見直したぜ」
セリナも微笑みながらエリンに近づき、そっと彼の手を取った。
「これで、星の剣は覚醒した。君は本当の力を手に入れたのよ」
エリンは疲れ果てながらも、自分が成し遂げたことに少し誇りを感じていた。しかし、これで終わりではない。星の剣の覚醒は、まだ始まりに過ぎなかったのだ。
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