第21話
3
みんなで作ったポスターの効果は、まあまああった。
興味を持って話に来てくれる人が出てきたのだ。
それこそ一年生から三年生まで、男女問わずいろいろ。
わたしは声をかけられるたびにいちいち緊張しながら対応して、中には話が弾んだ人もいたんだけど、実際譲渡の話になるとなかなか前に進まなかった。
もう一匹いるからとか、犬がいるからダメだとか、親に相談して反対されたとか。
いろんな理由で、いい返事がもらえないのだ。
でも、わたしはへこんではいなかった。
それだけみんな真剣に考えてくれているということだし、一瞬でもハチのことを思いやってくれたんだと考えたら、それだけでありがたかったんだ。
だけど、何の成果もないまま一週間が過ぎようとした金曜日には、さすがのわたしも焦ってきた。
猫カフェには「里親希望の人がいても少し待ってほしい」と伝えているけど、ズルズル先延ばしにするのもよくない。
どうしよう。
もう一度永人くんに相談しようか。
でも頼ってばっかりだしな……。
金曜日の放課後、席でひとりもんもんと考えていると、
「野上さん」
新名さんが、スマホ片手に振り返った。
結愛ちゃんとはすっかり仲良くなったけど、その結愛ちゃんが親しくしている新名さんとはいまいちなじみきれていないわたし。
少し緊張しながら「なに?」とたずねると、新名さんは無表情でわたしの目の前にスマホをつきだした。
「なんか、山岡っちが猫の飼い主をめぐって戦うらしいよ」
「え――⁉」
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