第74話

啄むみたいなキスを何度か繰り返し、逸耶の手が太ももを撫で、スカートに入った時だった。



「たのもぉーっ! 水乃せんせぇーっ! いるー!?」



「お前うるせぇーよ」



賑やかに、数人の声が準備室に響く。



逸耶を見て、早く離れてもらおうとしてもがく私に、逸耶は動く素振りも見せずに、人差し指を自らの唇につけて、静かにするよう示す。



「っ……んっ、はぁ……っ」



「声出したら、バレるから……静かにな……」



耳元で囁いて、意地の悪い笑みを浮かべてキスを続ける。



焦って逸耶の胸を叩く私に、容赦なく逸耶の手が脚を撫でる。



「ふっ……っ……ぅ……」



「漏れる声……エロ過ぎ……。バレるかもって、興奮してんの? お前今、濡れてんだろ」



何でもお見通しとでも言うように、ニヤニヤしている逸耶に不満を訴えるように睨んで、また胸を叩く。



「逸耶っ、いい加減にっ……ぁ……んっ、ほんとに、ダメっ……声、出ちゃっ……ンぅ……」



あっという間に下着に手を入れられ、完全に濡れてしまっている秘部に指が滑る。



声を出さないよう、必死に両手を口に当てて我慢する。



「準備室開いてっから、いるはずなんだけどな……」



「ここじゃね? ほら、あれ?」



「鍵掛かってんじゃん。おーい、せんせー、寝てんのー?」



ノブをガチャガチャと回し、何度もノックされて、流石に逸耶に向かって首をフルフルと横に振る。



逸耶が小さく舌打ちをして、私は自由になる。



息を整える私に向かって、逸耶は先程まで私をいじめていた指を、いやらしく舐めた。



ゾクリとして、濡れた場所がまた熱くなり、濡れた気がした。



「ゾロゾロと何だよ、うるせぇなぁ……。邪魔すんなよ……ったく」



扉の陰に隠れた私を更に体で隠すようにして、逸耶は部屋を出ていった。



逸耶の意地悪っぷりが、日に日に増していると思うのは私だけだろうか。



私は、逸耶が戻るまで、まだ熱い体を冷ます為に深呼吸をしていた。

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