第57話
教室へ向かう間、彼からの質問攻めに合いつつ、私も質問を返しながら、色んな話をした。
少し話をしただけで、彼が素直で純粋で可愛くていい子なのだという事が分かる。
別れ際もまた深くお辞儀をし、元気なお礼の言葉をもらってそれに手を振って応えて、教室を後にした。
ミス研の部室には、新しい顔ぶれがある。
「おっ、柚先輩っ! お疲れ様でーす」
「お疲れ様。
分厚い漫画雑誌を広げて元気な声を出したのは、一年生の男子、
「柚先輩、今日も変わらずお綺麗ですね。今日こそ僕と結婚を前提にっ……」
素早く私の手を取り、まるで物語の王子様のように跪いたのは、こちらも一年生の
「アホか。お前なんかが柚先輩と釣り合う訳ねぇだろ」
「そーだそーだ、恥を知れ恥をー」
煽るように言った一年生、
「柚先輩。こんなアホ共相手にしなくていいんで、こっちで女子会しましょー。私今日はマドレーヌ焼いてきたんですっ!」
こちらは二年生の、
「お、お先に、頂いてます」
控え目に言って、癖なのかメガネを指でクイっと持ち上げたのは、こちらも二年生の
あっという間に部員が増え、ミス研も賑やかになった。
それもこれも、全ては姫乃の「ミス研にも新しい風が欲しいよね」の一言だけで、これだけの人数をあっという間に集めてしまう、彰人のおかげだそうだ。
「ふふはー、ほへほいひーほー」
「彰人、食べるか喋るかどっちかにしなさいよ、行儀悪いわね」
口にマドレーヌを頬張って、まるでハムスターみたいになっている彰人に、眉を寄せて迷惑そうにしている割に優しく微笑む姫乃。
今日は全員揃っているようで、何だかんだワイワイと楽しく部活が始まる。
まぁ、部活と言ってもミス研の場合、ちゃんとミス研としての活動をしている部員はほぼ数人だけで、残りの部員は特にミス研にこだわりはなく、部員の自由に活動出来るという、不純な動機で入部しているといった状況だ。
それでも部活存続の為には、いてくれるだけでありがたい。
私にとって、ミス研は一つの居場所だから。
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