第56話
その後も、先生との進展は特になく、月日は流れ、私は三年生になる。
その頃には、もう私は先生が隣にいなくても一人で眠れるまでになった。
もちろん寂しいのはあるけど、いつまでも先生の負担にはなりたくないから。
自分の足で立って、歩いて、先生に釣り合うように、先生の隣に堂々といられるように、守られるだけじゃなくて、私も先生の役に立てる人になりたくて。
それで、ちゃんと先生に向き合って、気持ちを伝えたい。
最近は少し、色んな事を前向きに考えるようになった。
今まで無関心でいた事、他の色んな物をしっかり見て、聞いて、感じて。
先生の傍にいても恥ずかしくないと思ってもらえるように。
春が終わろうとしている、少しジメジメする日だった。
雲のせいで、空が暗くなってきた放課後。
ミス研の部室に向かう途中、廊下をキョロキョロしている男子生徒が目に入る。
幼さが残る感じがあって、一年生なのだと察する。
「どうしたの?」
「えっ、あ、いや、その、俺方向音痴で、迷ったっつーか……教室分かんなくなっちゃって」
「一年生かな? 案内するから、ついてきて」
私の言葉に、その男子は少し赤くなって「すんません、お願いしますっ!」と腰から勢いよく頭を深く下げた。
その姿が何だか純粋で可愛くて、笑ってしまった。
「クスっ。はい、お願いされました」
私は一年生の教室へ向かい、歩き出した。
「あ、あの、先輩は、その……何年っスか?」
「三年だよ。三年の木鷺柚菜です。よろしくね」
「あ、俺、
また先程と同じように、深くお辞儀をする。
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