第十二章
第55話
カウンセリングを受け、薬を飲み、先生に包まれて眠る。
私の生活は明らかに変わってしまったけど、正直これはこれで悪くない。
最近、ずっと先生の家に入り浸っている。というよりもうほぼ住んでいる。
何処に何があるかはもちろん、先生のルーティンまで把握している。
先生のルーティンに関しては、私が先生をよく見てるってだけ。
学校にいる時も、無意識に先生を探してしまう。
「柚菜ちゃんて、意外と依存体質?」
「えっと……どうかな……」
「水乃先生にだけじゃない? よく考えて、倉本君相手に、そんな事なかったでしょ」
「あー、確かにっ! じゃぁ、先生大好きってのが、体から溢れ出ちゃってるわけね」
楽しそうに明るく言う彰人に、呆れたみたいな姫乃。
やっと最近、明彦の話題を普通に聞けるようになった気がする。
最初の頃は、何処か罪悪感みたいなものと、ほんの少しの恐れ、情事の日々が頭を支配していたから、名前を聞くのすら拒否反応を起こしていた。
もちろん、貴臣に関してもだけど、ただ貴臣の方は明彦程怖さはなかったけど、複雑な気持ちになる。
それを、何日も、何週間も、何ヶ月も掛けてながら、辛くて苦しくて泣いている時は、優しく抱きしめて一緒に寝て、泣き疲れて心が削られている時は、傍で頭を撫でて癒してくれたのは、先生だった。
先生は何をしていても、どんな時でも、私の傍で私を優しく包んで、大丈夫だと安心させてくれる。
先生への好意は前からあったから、自分の中で先生が一番になるには充分で、それが依存と言われたらそうなのかもしれない。
薬とカウンセリングのおかげか、先生のおかげか、今はあまり症状が出なくなってきていて、病院でもいい兆候だと言われた。
明彦や貴臣の名前を聞いても、男性の体を見たり接触しても、前のようにフラッシュバックや体が疼く感覚はほとんどない。
もちろん、先生が私に手を出す事は一切ない。
学校で何度かシた仲なのに、今ではキスすらもしてくれない。
しても、額や頭に軽くするだけ。
やっぱり、先生にとって、私は恋愛対象にはならないんだろうか。
考えてみれば、彼氏がいるのに他の男、よりによって彼氏の兄や教師と寝るような女なんて、確かに嫌だろうな。
こんな汚れた最低女は、嫌がられるに決まってるのに、それでも私は先生に好きになってもらいたいと、そんな愚かな願いを抱いてしまうんだ。
最近、ふと明彦と貴臣の事を思い出す事がある。
恐怖で支配した明彦、快楽で支配した貴臣。
二人は、恐怖や快楽を私に植え付けてまで、私の何に執着し、期待していたのだろう。
二人に聞けるわけはない答えを、私はいまだに気にしていたりする。
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