第53話
〔水乃逸耶 side2〕
倉本は気づいていないが、綾坂の女子へ対しての牽制は、たまに目に余る時がある。
他の奴が気付いているかは知らないが、俺はあの女のそういった汚い部分に嫌悪を覚えて、それに気づかずに自分の女すら守れない倉本にも苛立ちを覚えていた。
[俺なら、こんな悲しい顔させたりしないのに]
無意識だった。
頭に浮かんだ言葉に、苦笑する。
コイツもコイツなりに、倉本と上手くやろうと必死なのをいい事に、それに甘えて好き勝手に幼なじみに振り回されて、好きな女を泣かせるなんて。
ショックを受ける柚菜を放って置けず、俺は柚菜の隙に漬け込んだ。
悪い大人だ。
そして、俺の理性が吹き飛ぶのは、簡単だった。
目の前にいるのは、普段ならガキだガキだと眼中にすら入らない女子高生。
なのに、ガキとは思えないその極上な体を前に、俺の体は真逆の反応を見せる。
線が細く、吸い付くような綺麗で滑らかな白い肌。
まるで飢えた獣にでもなったかのように、夢中で柚菜の体を貪った。
何処までも、男という生き物はどうしようもない。
自分もなかなかのクズだなと、心の中で笑う。
そう思っても、柚菜を抱く事をやめられず、教師として有るまじき行為を、いまだにこうやって続けてしまっているのだから笑えない。
そんな関係が続く中、俺は街でたまたま男に手を引かれて歩く柚菜を見つけ、自然とその二人を引き止めていた。
連れ込まれそうになっている場所は、明らかに如何わしい建物だった。
しかも、相手は倉本の兄貴だという。
どうしてまたこんなややこしい事になっているんだ。
コイツの周りは、何故にこんなこじれにこじれているんだろうか。
ほぼ投げやりで諦めている柚菜を、初めて部屋へ招き入れる。
露出のやたら高い服で、目の前の年の割に色気のある生徒がしてくる誘惑に、簡単に負ける教師とは情けない。
倉本への苛立ちは元々あるが、その兄貴にまで手を出されながらも、大した抵抗すらしない柚菜への多少の苛立ちも助けて、歯止めが効かない俺は、柚菜が気を失っても尚、何度も抱き続けた。
前まではそこまで大胆な行動をしなかった柚菜が、この日は珍しく軽率にも外でキスをして来たのには驚いた。
倉本との別れ話がこじれて、疲れて誰かに縋りたいのも分からなくはない。
この時、俺がもう少ししっかり柚菜を見ていたら、結果はマシになっていたのだろうか。
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