第49話
検査の結果、異常な日々の与えた過剰なストレスは、想像していたより私を蝕んでいたようで、病院の先生に言われた言葉は、あまりピンと来なかった。
“セックス依存症”の疑い。
私の場合、これに近い症状があるだけで、そこまで重症ではないらしい。
それでも、多少の支障は出るかもしれないと注意喚起された。
カウンセリングと薬で、様子を見る方向で話は纏まった。
後、さすがに両親には隠しておいてもらうよう頼んだ。
これ以上、悲しませたくはないから。
「俺に出来る事はするから、何でも言え。いいな?」
先生がそう言ってくれたから、少しは安心出来る気がした。
綾坂さんとは少し話をして、彼女はこれからも明彦の傍で、彼の力になり、支えて行くと聞いた。
あと数日で退院という日まで、毎日先生が顔を出してくれる。
「先生、暇なの?」
「あぁ? んなわけねぇだろアホ」
不機嫌そうにタバコを取り出し、病院だった事を思い出してため息を吐いてタバコをしまった。
「まぁ、でも、兄貴の方が大事にしなかったのもあって、今は何とか落ち着きつつある」
確かに、先生の顔色は前よりだいぶよくなっている。
「……あの……貴臣は、大丈夫なんですか?」
「まぁ、何とかな。目も覚めたみたいだし」
そう言った後、少し厳しい顔をして再び口を開く。
「ただ、こことは別の場所にいる。分かってるとは思うが、お前の状態がちゃんと治ったと判断されるまでは、会えないと思ってもらっていい」
心臓が小さくトクリと揺れた。
「……会いたいか?」
今の気持ちは“分からない”が正直な感想だ。
明彦と貴臣と三人でいた時も、貴臣と二人の時も、常に二人と体を重ねていたし、それ以外の時はほとんど疲れきって眠っている事が多かったからか、妙に気分も気持ちもふわっとしていて、頭にモヤがかかったみたいだった。
今はその感覚はほとんどなくて、どちらかといえば割とスッキリしている。
「会いたい……のかな……分からないです」
「ま、そんな急がなくても、一生会えないわけじゃない。今は自分の体の事だけ考えてろ」
先生が、また恐る恐る私の頭に触れた。
いつだって先生は優しくて、私を包み込んでくれた。
先生だって忙しいはずなのに、私に毎日会いに来てくれている。
これは、教師としての行動なのか、それとも。
ただ、この質問は私の口から出る事はなさそうだ。
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