第41話

どれだけの時間、喘ぎ続けたのだろう。



声も枯れて、視界が霞む。



「さすがに、疲れちゃったね……大丈夫?」



髪を撫で、そのまま頬に指を這わせた貴臣の、優しい質問に答えられない代わりに、貴臣の胴に抱きついた。



「甘えた柚菜もいいねぇ……可愛い」



ちゅっと頭にキスをされる。



このまま何も考えず、ただ気持ちいい事だけに身を委ねていられたら、どれだけいいだろうか。



心のどこかで、そんな事が許されるわけがないと、理解しているのかもしれない。



こんな関係が、上手くいくわけがないのだ。



快楽だけの、何の意味もない関係は最初だけで、永遠に続くはずがない。



「あ……学校……」



ベッドでまったりしていると、小さな置時計が視界に入って来た。



日にちと曜日が表示されていて、今日は平日でもう学校は始まっている時間だ。



「学校、行きたい? 行くなとは言わないし、行きたいなら柚菜の意見を尊重してあげたいけど。でもまぁ、俺としてはせっかく明彦から逃げて来たのに、わざわざ見つかりに行って欲しくはないかなぁとか思うわけですよ」



ベッドに座って寝転ぶ貴臣を見下ろしながら、私の頭に浮かぶのは、姫乃や彰人、先生。



そして、私と貴臣がいなくなった事を絶対に許してはいないであろう、明彦だ。



貴臣の口ぶりから、明彦が納得して私達と離れたようには聞こえなかった。



「学校、行きたい?」



「……分からない……特に楽しいとか、嫌だとか考えた事ないから……」



とりあえず、数日は休む事にして、貴臣が学校へ連絡を入れ、家の問題は適当に両親にメッセージだけ送った。



安全な事だけ分かれば、特に何か口を出してくるような親ではないのが有難い。



最近全然会えていない、年の離れた幼い家族の顔が思い出される。



「へぇー、じゃぁ、可愛くて仕方ないんじゃないの?」



「うん、二人共凄くいい子なの」



私とは大違いだ。



貴臣の作ったご飯を突きながら、今更な話をする。



そして貴臣が大学に行きながら、バイトをしている事を知る。



「他の大学がどうかは分からないけど、うちは提出物ちゃんとして、最低限出席してたら意外と好き勝手出来るし、バイトも知り合いの手伝いみたいな事してるから、時間は割と自由なんだよ」



前に座る貴臣が、私の頬を指で撫でて目を細めて微笑む。



「だから、柚菜との時間はちゃんと取れるから安心して」



下唇に指が這うだけで、体がビクリと反応してしまう。



「そうだ。俺結構頭いいから、勉強も見てあげられるし、柚菜は何の心配もいらないからね」



目の前でニコニコしている人は、私をこんな場所に連れて来て、何がしたいんだろうと、ふと疑問が浮かぶ。



「私にばっかり構ってて、大丈夫なの? その、他の女の子とか、怒るんじゃ……」



遊んでいる人だと聞いてはいるから、多分私みたいに体だけの女の子はたくさんいるんだろう。



正直、出来るだけ波風立てたくないし、彼女でもないのに、知らない女の子達から恨みを買うのは、真っ平御免だ。

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