第30話

腰を打ち付けるスピードを更に上げて、夢中で腰を振る明彦に揺さぶられるがまま、私はただ喘ぐ。



「柚っ、柚っ……好きっ、好きだよっ……俺から離れるなんて、絶対っ……許さないっ……ん、はっ……」



「あっ、あぁっ……きひ、こっ……ゃ、めてっ……」



「やめる? ははっ、馬鹿な事言ってないでっ、しっかり俺の気持ちっ、受け止めてっ……はっ、ほら、一回目っ……イク、よっ……」



「やだっ、ダメっ、明、彦っ……やっ、抜いてっ! 嫌だっ! ゃ、あぁあぁぁっ……」



抵抗なんて無意味だと思い知らされる。



どれだけ暴れても、嫌だと叫んでも、明彦の耳には届かない。



一度欲を放った明彦は、再び動き出す。



もう、私には抵抗する力すら残っていなくて、ただ揺さぶられ、喘ぐ人形に成り下がった。



「柚……ずっと一緒にいような……愛してる……」



甘く囁く明彦の言葉が、私の涙と共に染みになって消えていった。



涙すら出なくなって、拘束が解けて服を整えられ、明彦に手を引かれて倉庫を出る。



外はもうすっかり夕日が差していて、生徒もほとんど帰っていた。



部活帰りであろう野球部員の中に明彦の知り合いがいたらしく、仲がいいと冷やかされて嬉しそうな明彦を、まるで他人事のように見る。



「……ねぇ、明彦……」



何がそんなに嬉しいのだろう。



人の気持ちを無理矢理手に入れたって、それは偽りでしかないんだよ。



「明彦は、これでいいの?」



「何が?」



明彦の顔が曇る。



「これが明彦の、幸せ、なの?」



手が、声が、震える。



明彦が握る手に、力が入る。



痛みに顔を歪めた私を、明彦は引き寄せて抱きしめる。



「俺は、柚が傍にいてくれたら、幸せだよ」



強く抱きしめられ、私は考えるのをやめた。



これでいいのかもしれないと、思うようにした。



それが、楽になれる方法だから。

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