第25話

昼休み。



私は初めて入るミス研こと“ミステリー研究部”の部室で、昼食を広げていた。



「今日も姫の弁当うまぁー」



「彰人うるさい。ご飯は黙って食べなさい、行儀が悪い」



「毎日愛妻弁当食べられる喜びを噛みしめてるんじゃんっ!」



「……はいはい」



あしらいながらも、何気に嬉しそうな姫乃の様子に、私も表情が和らいでしまう。



厳しく、あまり表情を崩さないポーカーフェイスの姫乃の色んな表情を引き出すのが、きっと彼なのだろう。



「二人は付き合って長いの?」



「こ、恋人になったのは最近ね」



「ばぁちゃん同士が仲良くてさ、孫同士を結婚させようって約束してたらしくて、許嫁? ってやつ。あ、だからって付き合ったんじゃなくて、俺が姫をずっと口説き続けてたから、やっと最近受け入れてもらえたんだよ」



少し恥ずかしそうにお弁当を突く姫乃を、彼、沼田彰人ぬまたあきとが優しい目で見つめる。



「姫はすっごい可愛いんだー。特にちゅーした時なんかもぅ……くぅー……」



「あ、あ、あああぁぁっ、彰人っ!!」



顔を両手で覆って、身悶える彰人に真っ赤になった姫乃が取り乱した。



「随分賑やかだな、もう仲良くなったのか?」



いつの間にか部室内にいた先生が、眠そうに首を鳴らしている。



そして私の隣に座って、私の持っていた食べかけのサンドイッチを取り上げて食べてしまう。



「ちょっ、勝手に……」



「ん、美味いな」



指を舐める姿が妙にやらしくて、目を逸らす。



「さて、少し早いけど本題に入りましょうか」



お弁当を食べ終えた姫乃が、私達を交互に見る。



「お二人は、どのくらい付き合ってるの?」



「あれ? ちょい待ち。柚菜ちゃんて、倉本と付き合ってなかった?」



明彦の名前に、体が強ばる。



「別れる提案はしたんだけど、断られちゃって」



何ともないというように、そう言うしかなかった。



「ちなみに俺等は付き合ってない」



「は?」



素早く先生が答える。



少し、モヤッとする自分に驚いてしまう。



「コイツは倉本と付き合ってて、俺は……まぁ、流れでセフレ? みたいなもんだな」



先生の言葉に、目の前の二人が絶句する。



「とにかく、爛れた関係って事だけは理解したわ。色々あるだろうから、私は何も言わないけど」



と言いながら、気になるようだから、隠す必要もないから、私は今までの事を掻い摘んで話した。



「……気を悪くしたらごめんなさいね。実は私、あの二人がどうも苦手なのよね」



「俺もあんま好きじゃないかな。何か、あの二人って違和感だらけで、何かモヤモヤするっていうか」



二人が微妙な顔をした。



先生はただ黙って聞いている。



「私達の気持ちは置いておいて、別れてくれないのは悩みどころね。彼は余程あなたが好きなのね」



「……さぁ、どうなんだろうね」



それだけ好きなら、どうして他の女となんて。

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