第18話

私は一体、何をしているんだろう。



「はぁ……何? もう抵抗やめちゃうの? 残念、ちょっと興奮して来たのに」



「抵抗なんて、意味、ないでしょ……」



「ま、その方が俺も楽だけどね。じゃ、遠慮なく」



もう、どうにでもなれだ。



ほとんどヤケクソな気持ちで、抵抗をやめた。



今更自分がどれだけ汚れたところで、汚い事には変わりないし、誰かが助けに来てくれるなんて希望が叶うのは、漫画だけだから。



「はぁ、やばっ……柚ちゃんマジで高校生? エロ過ぎでしょ」



「んっ、んぅっ……はっ、ぁ、ンっ……」



お兄さんの首に腕を回し、角度を変えて何度も唇を貪り合う。



私はいつからこんなビッチに成り下がったのだろうか。



今はただ、お兄さんの気が済むのを待つしかない。



幸い彼は、女に優しい部類の男らしい。



「柚ちゃんさ、ちょっと悪い子にならない?」



「もう十分最低女ですけど」



「ははっ、まぁそんな卑屈にならないでよ」



お兄さんの言いたい事は分かる。



私は無事に帰れるなら、どうでもいいから、黙ってお兄さんに手を引かれて歩き出した。



この人がもっと酷い人なら、罪悪感とかもなく、楽になれたんだろうか。



まだ私は、この期に及んで自分を守ろうとしている。



それを物語るみたいに、脚が震えてくる。



手を引かれて夜の街を歩く私の耳に、雑踏の中から聞き覚えのある声が耳に届く。



「木鷺?」



呼ばれてそちらを見ると、そこにはタバコを片手に先生が立っていて、私とお兄さんを交互に見ている。



その目は鋭い。



「柚ちゃん、知り合い?」



「君こそ誰かな? 木鷺とどういう関係?」



「今から深い関係を築くから、お兄さん邪魔しないでくれる?」



「それは聞けないな」



先生が私の手を取って引き寄せる。



お兄さんの手が私から離れた。



「お前何なの?」



「俺はこいつの学校の教師だ。生徒が非行に走るのを止める義務がある」



いくら表の教師の顔をしないといけないとはいえ、先生の口からそんな真面目な言葉が出るのがおかしくて笑いそうになる。



そして私は、確実に安堵していた。



その証拠に、先程までの震えはすっかりなくなっていた。

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