第12話

思春期の彼にとって、その兄の遊びっぷりには苦労したようだ。



「部屋が隣だからさ、マジ勘弁して欲しいって思ってたわ……」



苦笑しながら言う。



飲み物を取りに行った明彦を待つ間、部屋を見回していると、不自然に倒されている写真立てが気になった。



それに手を伸ばして見ると、仲良さそうに笑う明彦と綾坂さんの幼い頃の写真と、少し前の写真が数枚入っていた。



「そんなん見ても面白くないでしょ。ほら、こっち来て」



いつの間にか背後に立っていた明彦が、私の手から写真を取り上げ元の場所に伏せて置いた。



そのまま手を取られ、ベッド前にある机に誘導される。



「座って。はい、紅茶。ちょっと甘いのが好きだったよね」



「うん、ありがとう」



隣に腰掛け、炭酸飲料を飲んだ明彦が一息吐いて、ベッドの縁に背を預ける。



「落ち着いた?」



「いや、自分の部屋に柚がいるんだと思うと、何か妙に落ち着かない」



照れたように頭を掻いてソワソワしている明彦が可愛く見えて、笑う。



「柚は、その……男の部屋には……」



「明彦が初めてだよ? 私そんなに遊んでるように見える?」



「ち、違うよっ! ただ、柚は俺と違ってモテるだろうし、付き合った男もいっぱいいるだろうからさ……」



「明彦もモテるじゃん」



「俺が? まさかっ! 俺、柚が初カノだし」



そうだ。明彦はモテるけど、綾坂さんがいるから自分がモテるのに気づいていないんだった。



「じゃぁ、綾坂さん以外でこの部屋に来た子は、私だけ?」



わざと彼女の名前を出すと、一瞬言葉を詰まらせた明彦が、複雑な笑みを浮かべた。



「やっぱりそこ、気になるよな……」



「仕方ないんじゃない? 幼なじみだし、家が近いんだから」



「怒ってる?」



「怒らないよ。だって、明彦のせいじゃないでしょ」



私の顔色を伺っていた明彦が、少し安堵したのが分かり、頭をそっと撫でる。



「そんな事気にしたって仕方ないよ。可愛いね、明彦は」



「ガキ扱いすんなよ……嬉しいけど……」



「わっ!?」



少し撫でていた手を掴まれ、引き寄せられてバランスを崩した私は、あぐらをかいている明彦の脚の間に座らされた。



座った状態で、後ろから包まれる。

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