第8話

少し寒かった体が、先生の与える温もりで温かくなる。



「はぁ……マジでっ、エロ過ぎっ……」



「んっ、ぁ……ちょっ、激しっ……ふっ、ぁっ……声出ちゃっ……あぁっ……」



いつもより大きく感じる先生の昂りが、深く奥への刺激を強くする。



声を我慢する方の身にもなって欲しい。



情事が終わる頃、洗った下着は乾いていて、無事下着を着けて用意してもらった、少し大き目のジャージを気終える。



さすがに制服は乾かなかったから、仕方なく今日はジャージで帰る事にする。



「てか先生さ、毎回思うけど私とこんな事してて、ちゃんと仕事してるの?」



窓を少し開けてタバコを吸う先生を見て、私は素朴な疑問を投げると、先生は目だけでチラリとこちらを見た。



「生徒にそんな心配されるとは、俺もまだまだだな」



「だって先生って、いつ仕事してんのか分かんないから」



「時間使うのが上手なのだよ」



「よく言う」



「ま、心配せんでもちゃんとやる事やってっから、お前は何も気にすんな」



タバコを素早く消して、まだ匂いの残る大人の大きな手が、頭をぐしゃぐしゃと混ぜた。



少し早いけど、私は他の生徒が帰る前に、出来るだけ見つからないように先生の持ってきてくれた荷物を持って、学校を出た。



帰り道、スマホが鳴ったのを見て、小さなため息が出てしまう。



“明彦”



前から多少はあったけど、最近更に明彦から綾坂さんを連想して、彼女がチラつく濃度が増した気がする。



少し、面倒に感じている自分がいる事に苦笑する。



深呼吸をして、通話ボタンを押す。



『柚? もしかして、早退した? 荷物なかったから、体調でも悪い?』



「ちょっと疲れただけだから、もう大丈夫。今日は一緒に帰れないから、また次学校でね」



有難い事に、明日は土曜日だから二人に会う事はない。



『柚っ! 日曜、何か予定あったりする?』



すんなり切れると思っていた私の耳に届いたまさかの提案に、驚きで咄嗟に嘘が出てこない。



こういう自分の不器用なとこは、嫌いだ。



「特に、ないけど……」



『もし、柚さえよかったら、その……うち、来ない?』



彼氏の家に行くという事は、そういう事も視野に入れなければならない。



明彦がどう考えてるかは置いておいて、家族が不在の家に呼ばれるのは、多分そうだろう。



断る理由が思いつかず、私は了承の返事を返した。



前までの私なら、多少なりとも楽しみに出来たし、少しは浮かれていられたかもしれないなと、電話を切って苦笑する。



休みの日に綾坂さんは一緒にいたりしないのかとか、私が行く事を彼女は知っているのかとか色々考えながら、私はスマホを鞄にしまって歩き出した。



明彦と付き合うという事は、綾坂さんの事もついてまわるから必ず考えなきゃいけない問題なのは、付き合うと決めた時から分かっていた事のはずだ。



けれど、想像していた以上に煩わしい。



「私、何で明彦と付き合ってるんだろ」



サラッと出た言葉にまた苦笑した。

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