3クセ:買い物
数日後。
行動が制限されるミラーシとシャルドネは、4人が拠点として100mおきに借りている部屋にそれぞれ置いてきていた。
エンメルとガードは、新装備等を求めて店に来た。
まずは武器屋に来ていた。
「おぉ! 勇者様と勇者様、ご来店ありがとうございます! あれ、勇者様と勇者様はいらっしゃらないのですか?」
「あぁ、今日は俺たち2人だ。ミラーシとシャルドネはお留守番だ」
「そうでしたか!」
武器屋の店主は、
店主の言葉にエンメルは小さく笑いながら頷き、ガードとともに店内を物色する。
ここの店はとても出来がいいことで有名で、つい先週から王立として認められたのだ。
そのため、かなり増築が施され、武具の試用ができる小さな闘技場などができている。
エンメルは適当な剣を手に取り、ガードとともに闘技場へ向かった。
「おい……勇者様と勇者様だぜ……」「マジじゃん……」「俺初めて見た……」「私なんか、光栄すぎて、魔力が安定しないのか分かんないけど、魔法の試し撃ちができないよ……」
1人だけエンメルの『魔法禁止領域』の効果をもろに食らっている人もいるが、ともかく。
勇者パーティーが来たことにより、その場にいた人たちからこそこそと声が聞こえてきた。エンメルはそれに片手を上げながら笑顔で対応する。
「んじゃ、早速試そうぜ」
「おう! どんと来い!」
ガードは普段使用している大盾を力強く構え、エンメルの剣の使用感を確かめる受け役となる。
「はあああぁぁぁぁぁ!!」
「す、すげえ……!」「これが勇者!」「気迫が違うぜ」「僕らと比べてはいけないんだ」「やっぱり魔法の試し撃ちができる気がしない……自分でも気づかないほど彼のこと尊敬してるんだわ!」
「せいッ!!!!」
エンメルは一息に剣を振るい、全力の一撃を大盾にぶつけた。
その衝撃に、ガードの持つ大盾だけでなく、この闘技場全体の空気が震える。
「ごルブへァ……ッ!」
その振り下ろしによる攻撃は大盾に吸収されてしまったが、吸収しきれなかった僅かな振動がガードに伝わり、壁まで吹き飛んだ。
「す、すげえ……!」「勇者様の盾を貫通して勇者様に攻撃を当てた!?」「これが勇者様……!」「でも、あの勇者様、さすがに飛びすぎでは……?」「ばっか分かんねえのか? あの剣の能力だよ。そうじゃなけりゃガード様があんなことになるわけねえだろ!」
盛大に勘違いしているが、都合の悪いことは耳に入らないというなろう系主人公の特殊能力を2人とも持っているため、何を言っているかは分らなかった。
エンメルは剣の性能を確かめる。
「うーむ……弱くはないが、今使ってる剣の方がいいかな」
『不死身領域』により、即座に全回復したガードがエンメルのもとに歩いてくる。
「俺もそう思うぜ! 今使ってる剣の方がHP削られたわ」
「やっぱりこの『魔人・シテンノー・ナカ・サイジャーク』が持っていた【魔剣ケンハツヨーイ】の方がいいか!」
そう結論付けたエンメルとガードは、「邪魔したな」といいつつ、闘技場を後にした。
剣は店主に「いい剣だった」と言って返した。
この剣はこのあと「勇者に認められた剣」として高額になるだろうが、なろう系主人公なので知ることは無いのだろう。
☆
次に武器屋の隣にある防具屋に来ていた。
ガードの新しい盾を求めてのことだった。
こちらでも相変わらずのことながら注目を浴びる。こそこそと先ほどと同じようなことをつぶやいている人もいた。
小さく笑って対応しつつ、盾を物色する。
「どうだ?」
エンメルはたまに盾を手にとって感覚を確かめては置いて、別の盾を調べているガードに声をかけた。
「まぁまぁいいのはあるが……オレの『魔人・カッタイン』が持っていたこの【魔盾・コワレン】の方がいいな」
「りょーかい。んじゃ帰るか」
特に収穫は無かったが、まだ最強装備であるということが分かったという収穫として、店を後にした。
このときガードが手にした盾は、このあと「勇者に認められた盾」として高額になるだろうが、なろう系主人公なので知ることは無いのだろう。
そのまま2人はミラーシの100m圏内を歩かないように、ミラーシの家から100m以上離れた家に帰ってきた。
ちなみに、この帰るまでの道中にすれ違った魔道具店では、小瓶を割ることで魔法が唱えられる魔法瓶が、すべて粉々のチリとなって消えるという珍事件が起こっていた。
後からこのことを知ったエンメルも、まさか『魔法禁止領域』のことだとは思う由もなかった。
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