第17話

マンションの前に、明らかな高級車が止まっていて、開かれた扉から、車内へ入る獣織君の背中を見て戸惑っていたら、中にいる獣織君に「トロトロすんじゃねぇ」と言われ、急いで入口付近の端に座る。



車内は普通の車より広くて、彼のお家がお金持ちなのが分かる。



エンジン音と、外の雑踏が小さく聞こえる車内は、静かで。



私はずっと自分のスカートを握って、下を向いて震えるしか出来なかった。



しばらくして車が停り、車を降りると、琉依君のマンションより、更に大きくて高級そうな建物に辿り着く。



先に先に入って行く獣織君に、急いでついて行く。



エレベーターに乗っていても、獣織君は何も言わない。



表情は怖くて見れない。



扉が開いて、また小走りで獣織君について行く。



部屋へ促され、キョロキョロと周りを見回していると、服を着替え終えた獣織君が戻って来て、手には何か紙袋を持っている。



何も言わず、腕を掴まれる。



「……ぃ、たっ……」



握る手の力が強くて、痛みに顔を歪める。



連れて来られたのは、寝室。



琉依君に負けず劣らず広い部屋に広いベッド。明るい琉依君の寝室より、シックで暗めで大人しい。



「全部脱げ」



「っ……ぁ、の……」



「また同じ事言わせんのか? いい加減にしとけ」



低く響く沈むみたいな声と、鋭さに磨きがかかった目に射抜かれ、怖くて震えが止まらなくて。



涙が滲むけど、唇を噛んで必死に我慢する。



服を全て脱いで、下着も脱ぐ。



「ベッド上がれ」



ゆっくりベッドに上がると、ベッドの足側の方に移動した獣織君が、紙袋を逆さに向けて中の物をバラ撒いた。



見た事のない物を、私はただ不思議に見つめる。



「脚開け」



言われて、ゆっくり脚を開く。



これには慣れる気がしない。



散らばった物を物色している獣織君を横目で見て、何をしているのか不思議で仕方ない。



「じゃ、始めるか」



両手にいくつかの器具を持った獣織君が言うと、体が自然と強ばって、後退りしてしまう。



「逃げんじゃねぇよ。ま、逃がさねぇけど。おら、しっかり脚開いてろ」



「ゃ、何っ……」



「誰が動いていいっつった、じっとしてろ。それとも、痛い方が好みか?」



首を何度も横に振って否定する。



目隠しをされ、目の前が真っ暗で何も見えず、恐怖と不安でまた震える。



「見えねぇもんな……今から何されっか分かんねぇから、不安か?」



耳元で低い声が響き、体がビクっとする。



「言いつけも守れねぇ悪い子には、お仕置きってな」



見えない分、低く囁く獣織君の声が、体中を支配するみたいで。

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