第8話

どのくらいの時間が経ったか分からない。



「だいぶ慣れて来たね……んっ、はぁ……そんな気持ちいいの?」



「ぁ……ん、は、あぅ……」



意識は朦朧として、ハッキリしないけど、先程の男とは違う、優しい抱き方をする男に揺さぶられながら、鋭い圧のある視線に貫かれているのだけは分かる。



バスタオルを腰に巻いて、タオルを首に掛け、ソファーに足を組んでふんぞり返る男。



「俺に抱かれてんのに、他の男の事見つめて……君って、悪い子だ、ねっ……」



「ああぁっ!」



思い切り奥を突き上げられ、掠れ始めた声で高く啼く。



「いい声っ、んっ、ぁっ、はぁ……」



もう何も考えたくなくて、優しくキスをする男の首に、自らの腕を回してしがみついた。



「ンっ、はぁ、んー、何? 俺に甘えてくれてんの? 可愛いねー……じゃぁ、キスしたままイこっか……」



すっかり慣れてしまった体は、痛みなんて感じる事はなくて、快楽ばかりを簡単に拾い上げてしまう。



終わった後、もう私には指一本すら動かす体力は残っておらず、疲れ切って目を閉じた。



その時ですら、圧のある鋭い視線を感じてしまっていた。



次に目を覚ました時には、体は綺麗にされ、制服をちゃんと着ていて、まるで何もなかったかのようで。



夢ならどれだけよかったか。



けど、夢じゃないんだと、軋む体と下腹部が嫌な事を思い出させる。



最悪な気分だ。



辛い体をゆっくり起こすと、また涙が出る。



体の痛みなんて、なんて事ない。心が、痛い。



「ふっ……ひっ、ぅ……っ……」



「起きて速攻から泣くとか、忙しい奴だな」



まさか、人がいるとは思わなくて、目いっぱい目を開いてそちらを見た。



鋭い目と目が合う。



本当に最悪だ。



よりによって、何故いるんだろう。



「お前、もちっと体力付けとけ。そんなんじゃ、この先俺の相手出来ねぇぞ」



相手とは、どういう意味だろう。



もう終わったんじゃ、ないのか。



「これなーんだ?」



「っ!? な、んで……やだっ!」



「おーっと。何だよ、結構元気じゃねーか」



信じられない。



スマホを楽しそうに見せられ、そこに映る画像に羞恥で驚愕する。



スマホに手を伸ばしたけど、避けられて意味がなくなる。



目の前の男は、本当に人間の血が流れてるんだろうか。

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