第3話

疑問で頭がいっぱいの私を他所に、二人は私の前を歩きながら、談笑していた。



どういう状況なのか、パニックだ。



「ここが君のおうち? てか、暗くね?」



「あ、……ありがとう、ございました……。あ、あの、手……」



「あー、ごめんごめん。んじゃ、俺等はここで待ってっから、それ渡したら出ておいでー」



まだ何かあるのか。



だから、私に着いてきたのか。



私は、どうなってしまうのか。



ニコニコする男の横で、興味もなさそうにスマホを触る大きな男。



怖いけど、この二人から逃げる方が後が怖い。



私は父にお酒を渡し、聞いているのかいないのか、外出する報告だけして家を出た。



言った通り、二人は家の前にいた。



「よーし、じゃぁ、行こっか」



「あ、あの……何処に?」



「まぁまぁ、ついてくれば分かるよ」



私は今から何をされるのか、怖くて震える脚を必死で動かして歩く。



「ここ、は……」



「あ、もしかして、こういう所来るの初めて?」



煌びやかで、何処か怪しさもある建物。



実物を見るのが初めてで、呆気に取られている。



そして、先程より脚が重いのは、ここが何をする目的の場所かを知っているからだ。



“ラブホテル”



様々な人が、この建物の中で性行為をする。



私は、今からこの二人に、そういう事をされるのだ。



逃げたいけど、脚が上手く動かない。



「怖くなっちゃった?」



「っ!?」



肩に手を置かれ、耳元で囁かれ、体を固くする。



「震えちゃって……可愛いね……」



「トロトロすんな、さっさと来い」



「あっ!」



強く腕を掴まれ、引っ張られる。



抵抗するのに、全く歯が立たない。

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