第2話
お酒を袋に入れ、私に手渡す前に店主さんがジュースを袋に足して行く。
「これは私からのおまけね」
「え、そんな……」
「いいから。子供が遠慮すんじゃないわよ。ほら、早く帰らなきゃ、いくら近所でも夜道に女の子一人は危ないから」
「あ、ありがとうございますっ!」
相変わらず笑顔で手を振る店主さんに頭を下げ、私は急ぎ足で店を出た。
もう暗い夜道は、少ない街灯でしか照らされていないから、少し見えづらいけど、それでも私は軽く走っていた。
だから、止まるタイミングを逃した。
────ドンッ!
ぶつかった拍子に後ろへ倒れ、お酒の缶をバラ撒いてしまう。
「あーあー、大丈夫ー? って、あれ? うちの制服?」
「……酒?」
軽く打ったお尻を撫でながら、ふと見上げると、お酒の缶を拾ってこちらを見た人と、ばっちり目が合う。
最初の印象は“大きい人”。
次の印象は“怖い”だった。
「あ、あ、あの、か、返し、てっ……」
「あ?」
「っ……あ、そ、それ、か、か、返してっ、く、下さっ、ぃ……」
見下ろされる目が鋭くて、寄せられた眉がその目を更に攻撃的に見せていて。
学ランを着ていても分かるくらい、物凄く大きな体は迫力がありすぎて怖くて、喉が引き攣るみたいに震えて、声が上手く出せない。
無言がここまで怖いなんて。
こんな人から缶を奪い取るなんて出来るはずもなく、どうしていいか分からず、涙が滲む。
「あーあ、お前が凄むから、彼女泣いちゃったじゃん。大丈夫?」
「あ? 俺はまだ何もしてねぇだろーが」
「まだって……お前、まさかこんなか弱そうな子に、何かするつもりなんかよ……鬼畜じゃねぇの」
大きな人は、私の目の前にしゃがみ込み、缶を見せる。
「未成年で酒、ねぇ……。お前、見た目に寄らず、悪い子なん?」
「あ……あ、の……それ、はっ……」
「あ? 声小っせぇな。聞こえねぇよ」
「っ、ご、ごめっ、なさっ……」
少し声が大きくなり、それにまた身が縮んでしまう。
無意識に謝る私に、小さき舌打ちをした彼は、立ち上がる。
いつの間にかお酒が全て袋に戻されていて、もう一人の人が私にそれを差し出した。
「はい。急いでたんじゃないの? 行かなくていーの?」
「へ……あ、ありがとうっ、ございます……」
「いえいえ。んじゃ、行こっか?」
「……え?」
手を取られて立ち上がると、そのまま手を引かれて歩き出す。
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