凶獣恋愛〜その愛に祝福を〜

柚美

プロローグ

第1話

入学してすぐに、私はこの学校の異様さを目の当たりにする。



「何だテメェ、コラァッ!」



「アァッ!? 何見てんだコラァッ!」



不良と言われる人達を見るのが初めてで、私は出来るだけ接触しないようにする。



入学して数ヶ月、そろそろ学校にも慣れて、友達もそこそこに、私は油断していた。



自分は地味だし、賑やかに騒ぐようなタイプでもないから、そんなに目立ってないはずだ。



背丈だって普通だし、スタイルが特にいい訳でもない。



至って普通だと思う。



だから、今までも不良と言われる人達と接点なんてなかったし、どんな人がいるのかすら知らなかった。



それなのに、こんな形で関わる事になるなんて。



私の家庭は少々複雑である。



父と母は職場で出会って、キャリアウーマンで美人な母に惚れ込んでいた父が、魅力的でライバルの多かった母を射止める為に必死に努力をしたらしい。



私が生まれて少しして、母は飛行機事故で突然いなくなった。



それが原因で、父は壊れてしまった。



毎日お酒を飲んで、暴れて、また飲んで。



幸いな事に、私に手を上げる事はしないし、お金に関しても、貯金が趣味だったのと、遺産がたくさんあったらしい母のおかげで、今二人で何とか暮らせている。



私の仕事は、夜になると近所の酒屋さんにお酒を買いに行く。



そこは母の同級生の家で、うちの家庭事情を知っている為、私に何かあってはいけないと、私が未成年であってもお酒を売ってくれるのだ。



ありがたくて、感謝してもし切れない。



今日も、私は母の写真を見ながら泣く父を横目で見て、お酒を買い足す為に酒屋に走る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る