第43話
そんな事、私が一番分かってる。
だけど。
「美亜さんは綺麗だし、私より数倍も華があるし、蓮君の隣にいたらお似合いかもしれません」
「でしょ? だから……」
「美亜さんの気持ちがどのくらい強いとかわからないですけど、でもっ! 私だって、蓮君を好きな気持ちは負けないつもりです」
言いたい事はあるのに、どう言葉にしていいのか分からない。
頭がぐちゃぐちゃで、心臓は高鳴る。
人に何か自分の意見を主張するのはあまりしてこなかったから苦手だし、強く言うのも苦手だ。
でも、蓮君が教えてくれたから。
欲しいと思ったら、勇気を出して自分から動かなきゃ、手に入らないから。
蓮君の隣にいる為に、強くならなきゃ。
「後から出てきて蓮の気持ちを独り占めして、私の邪魔してさ。ほんとあんたなんなの? 蓮も何であんたみたいな何にもない女……。そんなあんたに負けてるなんて思えない」
「私は美亜さんみたいに華があるわけでも、大人の魅力があるわけでもないし、他に何もないかもしれません。今は蓮君の隣にいても、釣り合わないって自分が一番分かってます。それでも、私は蓮君が好きで、欲しくて、そばにいたくて……誰にも渡したくない」
美亜さんをまっすぐ見て、お腹に力を入れる。
言葉は纏まらないけど、自分が思う精一杯で、彼女にぶつかる。
「貴女に言われたからとか、誰に言われたからとかじゃなく、誰に何を言われても、蓮君から離れる事なんて、私には出来ません。ごめんなさい」
まだドキドキが止まらないけど、私に今出来る事はこれが全てだ。
沈黙が流れる。
最初に沈黙を破ったのは、美亜さんだった。
「大人しそうにしてるくせに、言うじゃない。あんた頑固って言われるでしょ?」
「あー、まぁ……」
つい最近言われたなと苦笑して美亜さんを見ると、少し表情がやわらいでいた。
「冴香っ!」
「れ、蓮君っ!?」
いるはずのない蓮君の声がしてそちらを見ると、走ってくる蓮君の姿が見えた。
「大丈夫? 何もされてない?」
「ちょ、蓮君っ、大丈夫だからっ! ちょっと落ち着いてっ……」
肩を掴まれたと思えば、両頬を蓮君の大きな手に包まれ、顔から始まり、体中を確認するみたいに触られる。
「蓮君凄い汗……走って来たの?」
「何かあったらって焦って、めっちゃ色んなとこ探した」
額をくっつけて、大きく息を吐いて「よかった」としゃがみ込む。
同じようにしゃがみ込み、ハンカチで蓮君の汗を拭く。
「私の時にはそんな必死な姿、見せてくれなかったよね……。悔しいけど、その子が凄い大事なのは分かった」
苦笑する美亜さんが、私達に背を向ける。泣きそうになる顔を隠したように見えたのは、気のせいじゃないだろう。
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