第41話

蓮君がクスリと笑ったのが聞こえる。



「恥ずかしがってる冴香、可愛い」



楽しそうな顔で笑う蓮君を、恨めしい目で見上げる。



「そんな顔で睨んでるつもり? 俺を誘って、煽ってるようにしか見えない」



「ゃ、あぁっ……」



泡で滑る手が、胸と脚の間を刺激していく。



体を捩り、背後にいる蓮君に体を預ける。



綺麗にしているはずの泡は、最早役に立っているのかすら謎だ。



シャワーの熱気と、蓮君の与える快楽に朦朧としながら、その後も何度か蓮君の興奮を受け入れた。



翌日、朝からしつこいくらい蓮君の心配する言葉に苦笑しながら、私には気がかりな事が。



「あー、いたねー、そんな女ー」



「そりゃ、彼女としては気になるよね"アレ゛は」



二人が言っているのは、私の記憶にもしっかり存在する蓮君の"元カノ゛の存在。



しかも、あの人は蓮君の"初めてのヒト゛だ。



帰る支度をして、廊下へ出た私の元に来た蓮君が、素早く私の荷物を持つ。



朝にもこんな事があった気がする。



「蓮君……じ、自分で持てるよ?」



「でも、俺あの日、あまりの嬉しさに興奮ヤバくて、かなり暴走したから、ちょっとしか手加減出来なかったし」



あれでちょっとでも手加減したのだと知り、私は少し恐ろしくなった。



「さすがにもう大丈夫だから」



「本当に? 辛くなったらすぐ言って、絶対」



「ありがとう」



更に過保護になった蓮君からカバンを返してもらい、学校を出る。



そこで、私の視界に見覚えのある人が。



「……はぁ……またか……」



隠そうともしない蓮君の嫌そうな声が聞こえる。



「蓮っ!」



嬉しそうにこちらに走り寄って蓮君の腕に、何の違和感もなく絡みついたのは、美亜さんだ。



でも、蓮君も違和感なく自然とその腕をやんわり振り解く。



「あのさ、俺あんましつこいの好きじゃない」



「蓮……」



冷たく言い放つ蓮君と、悲しそうな表情の美亜さんとの間にピリリとした空気が流れる。



「れ、蓮君、とりあえず何処かでちゃんとゆっくり落ち着いて話したらどうかな? ほ、ほら、蒼さんも言ってたし、ね?」



空気に耐え切れず、私は二人の間に割って入ってしまった。



何も言わず私を見る美亜さんと、不満そうな蓮君。



「冴香も来るなら行く」



「え、わ、私?」



「美亜もそれでいいだろ。それ以外の条件なら俺は飲まないし、美亜を視界に入れる事もしない」



極端な事を言い始める蓮君に、私はどうしていいか分からなくなり、動揺していると「分かった」と意思の強い声が聞こえた。



もちろん、美亜さんだ。



こうして、何故か三人でファミレスへ向かう事になってしまった。

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