第33話
気を取り直した私は、教室へ向かう廊下の曲がり角で、伸びてきた手に腕を掴まれ、体勢を崩した。
けど、転ぶ事はなく、そのまま体は宙に浮いた。
「捕まえた」
「れ、蓮君っ!? ちょ、やっ、降ろしてっ……」
「嫌だ」
「わ、私こんなのっ、もっと怒るよっ!?」
何故か嬉しそうに笑う蓮君に、私は拍子抜けしてしまい、目を逸らして拗ねたような態度になってしまう。
「わ、私っ、まだ怒ってるんだからっ……」
「さっきはごめん。でも、怒ってる冴香が可愛過ぎるから、俺困ってるんだよね、どうしようか」
甘く言われ、耳にキスをされる。
「もぉっ、蓮君っ……場所っ、考えてっ……」
「うん、ごめん……でも、抑えられない……」
人気のなくなった廊下を、抱き上げられたまま何処かに連れていかれるのを、どうしていいか分からずキョロキョロするしかなくなってしまう。
「蓮君、授業がっ……ねぇっ、何処行くのっ?」
「二人になれるとこ」
駄目だと口では言いながら、止めなきゃいけないのに、心臓は高鳴って。
校舎の裏にある裏階段に着き、階段に腰を降ろす蓮君の膝を跨ぐように座らされる。
距離がやたら近くて、キスをしてる時と同じようで違う胸の高鳴りに、腰に回された蓮君の手から徐々に体が熱くなる。
「期待、してるの?」
「何、言ってっ……」
「冴香、今どんな顔してるか、分からないでしょ?」
「やだっ……そんなっ、ジっと見ないでっ……」
顔を隠そうとした手を、やんわりと器用に胸の前で拘束される。
「可愛いのに、見なきゃ損でしょ。彼氏の特権」
「恥ずかしいっ、からっ……」
顔を背けるけど、また蓮君のズルい声が耳に届く。
「冴香、こっち向いて?」
私にだけ囁かれる、トロけるような甘い声。
ゆっくり視線が交わる。
「冴香、めっちゃ好き」
啄むみたいに繰り返し口付けられ、何度も囁かれる“好き”という言葉に、体全体で喜び、震える。
「蓮っ、くっ……ンっ……ぁ……」
こめかみ、頬、耳、耳の付け根、そして首にキスが落ちると、ゾワっと肌が騒がしくなり、自然と声が漏れた。
「冴香が可愛くて、好き過ぎて……キスだけじゃ……足んなくなる……」
「ゃっ、あっ……」
スカートから手が入り、太ももを撫でる蓮君の大きな手。
もう片方の手は、制服の上から胸を包む。
「ひぁっ……れ、蓮君っ、ここ、学校っ……」
「学校じゃなかったら、いいの?」
興奮した蓮君の吐息混じりの声が、耳にキスをしながら伝わる。
胸を優しく揉む手と、太ももからお尻に移動してそこを揉む手を遠慮気味に止めて、蓮君を見る。
そこには、いつもの眠そうでぼんやりした彼の面影はなく、しっかり男の子の顔があった。
怖くないと言ったら嘘になるけど、私も彼ともっと近づきたい。
「冴香のもっと奥に触れたい……まだ、駄目?」
蓮君の縋るような表情に、私ゆっくり「いいよ」と答えた。
この震えは、怯えじゃないのだけは分かった。
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