第27話

クラスの大半の生徒が眠そうに欠伸や伸びをしている。



午後の授業は、放課後になるまでこんな感じで毎日進み、放課後になった瞬間、それまでの眠気が嘘だったかのように、みんなが元気になるのだ。



ただ、一部の生徒だけは、最後まで眠気など全く感じていないかのように、しっかりした表情で黒板に視線を送る。



唯はそちら側だ。



「唯ー、ノート見せてー」



「いいけど、こないだも国語の時ノート取らなかったでしょ。たまにはちゃんと授業聞いて、ノート取りなよ。だからこないだの試験だって、点低かったんでしょ」



「だってー、国語って何やってたって、眠いんだもーん。それに、試験は問題がズル過ぎたのー」



悪びれる事のない莉央奈の頭に、唯の「言い訳しない」の言葉と共に、ノートが軽く叩きつけられた。



「あだっ……うぅー、すんませーん……」



唇を尖らせながら、莉央奈が謝る。



二人のやり取りに笑うと、莉央奈が唯のノートを丸めながら口を開く。



「てかさ、そういえば、そろそろ体育祭の時期じゃん? 二人は何に出るか決めた?」



「人のノート丸めるな。種目も大して変わらないだろうし、私は去年と同じでリレーにして、あと一つはゆっくり決めようかな」



「唯は足早いし、走るの好きだもんね。莉央奈は?」



私の質問に、莉央奈が「うーん」と唸る。



「やるなら面白そうなのがいいよねー。私走るの嫌いだし、何よりただ走るとかつまんないしー」



「冴香は?」



唯に言われ、去年の体育祭を思い出しながら、考える。



「私も走るの苦手だから、種目見て決めようかな」



うちの学校は、個人種目と団体種目の両方を、必ず一種目ずつ出なければいけない決まりだ。



その他にも、部活に入っている人は、部活対抗などの種目もあって、大変だなと毎回思う。



こういう時は、運動神経のいい唯が羨ましい。



「今年も唯はまた助っ人するの?」



「そうだね。頼まれたら断る理由ないし」



去年も唯は、部活対抗種目の助っ人を頼まれて活躍していた。



「まぁ唯は普段から部活掛け持ちしてるみたいなもんだしねー。最初の頃なんて、唯が何人もいるんじゃないか説出てたもんねー」



こうして、私達の雑談の中で体育祭の話題が出た数日後、HRで種目決めが行われた。



ありがたい事に、運動苦手勢には酷なリレーなどの種目が、割と早めに埋まった為、私はそれ以外の個人種目を選択する。



私は、個人種目をパン食い競走、団体種目を綱引きに決めた。



莉央奈は個人種目を借り物(人含む)競争、団体種目を騎馬戦。



唯は個人種目を徒競走、団体種目を障害物リレーと、無事決まった。



「クラス対抗リレーは、今年も立候補で決めます。人数が少ない場合はクジで決めますが、友達の推薦でも構いません。出たい人は挙手でお願いします」



委員の声に、数人の手が上がり、友人に背中を押されて、ノリでなど、色んな理由で次々と手が上がり、これもスムーズに決まった。



「自ら進んで走ってくれる人ばっかで、ありがたいよねー、ほんと」



走るのが苦手な私には、本当にありがたい事だ。

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