第15話
凄く楽しくて、この時間が終わるのが寂しい。
「さて、今日はみんなで出掛けようと思うんだけど、どうかな?」
蒼さんの一言で、出掛ける事になった。
運転してくれる蒼さんが用意してくれた、大きな車に乗り込み、着いたのはショッピングモールに隣接されている水族館だった。
触れ合いも出来るらしく、陸も莉音ちゃんも嬉しそうに手を繋いではしゃいでいる。
凄く広くて、ショッピングも出来て、一日中いられるから、カップルはもちろん、家族連れも多い。
「私ずっとここ来てみたかったんだよねー」
「彼氏とじゃなくて残念だ」
「頼は……あー、色んな子と来てそうだね」
「否定はしないかな」
「キモ……」
「酷っ!」
いつもみたいに、莉央奈と桂川君とのやり取りをみつつ、視線が刺さる。
凄く、刺さる。
「蓮君……ど、どうしたの?」
「冴香は、誰かと来た事、ある?」
これは、異性とという意味だろうか。
そう思ったのは、無表情の中に、何処か不安そうな顔が見えた気がするから。
「ううん、初めてだよ。なかなか遠くに行く事ないし、それにほら、私は男の子と何処か行く程、みんなみたいにモテないし」
「モテなくていい。俺だけでいい」
まっすぐに、そう言って見つめられる。
まただ。
心臓が、キュッとなる。
蓮君は本当にまっすぐ自分の気持ちを、偽りなく伝えて来るから驚いてしまう。
「れ、蓮君は……」
「家族とだけ」
まだ質問の前で、短い答え。そして。
「わざわざ色んなとこ一緒に行きたい子なんて、いないよ」
「でも、ほら、今までの彼女、とか……デートとかするわけでしょ?」
「その子が行きたい場所に付き合うだけだったし、誰かと何処かに行きたいとか思った事ない」
やっぱり謎だ。
「勘違いしないで欲しいんだけど、付き合った事くらい少しはあるけど、俺そんなにたくさんの彼女とかいた事ないよ。好きな子なんて出来た事ないし、頼みたいに世界中の女の子可愛いーって思うタイプでもないから、特定の誰かと付き合うとか、正直面倒だし」
意外な言葉に固まっていると。
「だから、冴香がちゃんとした初恋だし、初めて面倒とかそういうの全部取っ払って、手に入れたいって思った女の子だよ」
どうしたらいいんだろう。
これは、ズル過ぎる。
顔が熱くて、蓮君を見れなくて下を向く。
何処までも特別だって言われて、嬉しくない子がいるのだろうか。
本当にズルい。
「顔真っ赤。可愛い」
「か、からかわないでっ……」
軽く腕を叩いた私に、蓮君が「ごめん」と声を出して笑う。
「何か、イチャついてんの、腹立つな」
「ほんと。二人だけの世界的な?」
「よし、みんな全力で邪魔しよーっ!」
唯、莉央奈、桂川君が私と蓮君の間に入って来る。
連なるみたいに、腕を組んで走り出す。
「こらこら、あんまり人様の迷惑にならないようにねっ!」
「ったく、子供みたい」
「でも、楽しそうだね」
呆れたみたいに言う莉音ちゃんと微笑む陸、そして苦笑する蒼さん。
その日、私達は暗くなるまで遊び回った。
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