第13話
お風呂から上がると、リビングで男性陣が談笑していた。
「おー、いいねー、風呂上がりの女の子とか、テンション上がるー」
「頼、キモい」
「莉央奈ちゃんはほんと失礼だね」
ふと蓮君と目が合う。
無言で近づいてくる蓮君の勢いに、少し怯んでしまう。
「風呂上がりの冴香……」
「ちょ、れっ、蓮君っ……」
「冴香のと混ざってすっげぇいい匂い……自分ん家と同じ匂いとか……これは、ヤバい……」
突然抱きしめられて、変な声か出る。体を押し返そうにも、なかなかの力だから服を引っ張るしか出来ずにもがいていると、バシッといい音がする。
抱きしめられながら物凄い事を言われた気がして、恥ずかしくなる。
頭を叩かれた蓮君が、その部分を手で押さえながら、叩いた人物に抗議の目を向けた。
「蓮、いい加減にしないと、外で寝てもらうぞ?」
「……ごめんなさい」
素直に謝って、眉を下げて蓮君は蒼さんを見た。
さすがの蓮君も、蒼さんには勝てないんだなと新たな発見だ。
男性陣がお風呂へ行くのを見送って、ソファーに座った私達に、蒼さんが冷たいジュースを出してくれる。
お風呂で火照った体に、冷たいジュースが染み渡るようで、一息吐いた。
自分の家じゃない場所でご飯を食べて、お風呂に入って、すっかり寛いでしまっていて、贅沢な時間に浸っていると、男性陣が戻って来る。
「いやー、いいお湯だったー。久しぶりにゆっくり入った気がする」
「みんなでお風呂楽しかったーっ!」
蓮君に抱っこされながら、陸がはしゃいでいる姿に、微笑ましくなって頬が緩む。
蓮君と視線がぶつかる。
お風呂上がりで妙な色気が溢れる蓮君に、鼓動が早くなって、目のやり場に困って目を逸らす。
人はただお風呂に入っただけで、こんなにも変わるものなのか。
もちろん、蓮君だけじゃなくて頼君や唯、莉央奈もだけど、人の持つ色気とは怖い。
子供っぽい私に色気なんてものは、程遠いやつだ。
少し、羨ましい。
体温を下げるように、ジュースを一気に飲み干す。
リビングでみんな雑談したり、カードゲームやボードゲームをしたりと、初めての事ばかりで、時間はあっという間に過ぎて行った。
なかなか遅い時間になり、陸と莉音ちゃんがソファーに凭れてウトウトし始めたのが見えた。
「さて、じゃそろそろおチビちゃん達を寝かせてくるとしようか」
「あ、私が……」
「いいからいいから。二人は俺に任せて、冴香ちゃんはみんなと楽しんで」
蒼さんがそう言ってウインクしてみせた。
せっかくの好意を無駄にしないように、蒼さんにお任せする事にした。
「冴香」
みんながワイワイしている中、蓮君が声を掛けて来た。
「来て」
手を差し伸べる蓮君の手を取って立ち上がる。
手を引かれながら、何処へ行くのかと問い掛けるけど、蓮君はただ優しく微笑むだけだ。
階段をいくつか登り、外の空気が体を包んだ瞬間、蓮君が空を指差して微笑む。
「見て」
「わぁ……」
空を見上げると、そこには無数の、数え切れない程に輝く星があった。
普段、空をこんなにもじっくり見る事なんてないから、何と言うか、不思議な気持ちだ。
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