第10話

夕方になり、夕飯の用意をしている蒼さんとそれを手伝う唯と桂川君。



莉央奈と私と蓮君は食器を用意したり、その他の事をしていた。



「蓮、もう出来るから、おチビちゃん二人を呼んできて」



「あ、私も行くよ」



莉央奈が「行っていーよー」と言うので、蓮君と二人で陸達を呼びに行く。



蓮君に案内されて、扉が開いている莉音ちゃんの部屋に入る。



「莉音、陸君、ご飯……おっと」



「あらら、仲良く寝ちゃってるね。ふふ、しっかり手まで繋いで、本当に仲良しなんだね」



二人で寄り添い、手をしっかり握りながら眠る二人が凄く可愛くて、癒されてしまう。



普段大人びた莉音ちゃんも、眠っている時はさすがに年相応の小さな女の子だ。



「いいな……」



「へ?」



膝を抱えてしゃがんだ蓮君が、少し拗ねたように口を尖らせる。



「俺も手繋ぎたい」



「ま、またそういう事を……」



何を言うかと思えば。どう反応するべきか困ってしまう。



「そ、そんな事より、どうしようか……」



「そんな事……。まぁ、寝かしておいてあげてもいいんだけど、でも……うーん」



二人で悩んでいると、可愛い二人が身動ぎする。



長いまつ毛が揺れ、小さな目が開いた。



「んー……ふぁ……」



「おっ、ナイスタイミングだな。ほら二人共、ご飯だぞ」



眠そうに目を擦りながら、二人が起き上がる。



二人を連れて、みんなの元に戻ると、ほとんどの用意が出来ていて、美味しそうな料理が数多く並んでいた。



「す、凄いっ! これ、全部蒼さんが?」



「いやー、大勢で食べるのが嬉しくて、張り切っちゃったよ」



後頭部に手を当てながら、照れたように笑う。



一人で作るにしては、なかなか骨が折れるであろう量に驚きを隠せない。



「さぁ、冷めないうちに食べようか。みんな好きなとこに座って」



「僕莉音ちゃんの隣っ!」



すっかり目が覚めて、楽しそうにはしゃぐ陸を座らせて、その左側に座る。



その左隣を素早く蓮君が陣取った。



そんなに急がなくても誰も取らないのに、こういう所は可愛く感じたりする。



こんな大勢で食事をする事がほとんどないから、陸も楽しそうで私もワクワクしている。



人数が変わるだけで、何でこんなに味が変わるんだろう。



御手洗を借りると言いながら、私は皆からできるだけ離れて、廊下の隅の方に移動する。



涙が、出た。



感情が定まらない。



涙を拭いながら、気持ちを落ち着かせている私の頭から、何かが被せられた。



蓮君の匂いがフワリと鼻をくすぐった。



何も言わない蓮君の気配に、私は少し振り向いた。



「もう、平気?」



「何で……」



「分からないけど、何となく……かな」



蓮君の方を体ごと向いた私を、蓮君が優しく目を細めた。



「抱きしめて、いい?」



私が返事をする前に、蓮君の腕が回って、優しく包まれた。



蓮君の香りが濃くなった気がして、恥ずかしくなる。



けど、抵抗はしない。



肩に乗る蓮君の顔が、頬に当たり髪が揺れる。

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