第二章

第8話

手土産を持って、陸と手を繋ぎながら、唯と莉央奈との待ち合わせ場所へ向かう。



二人はもう来ていて、こちらに気づき手を振った。



「唯ちゃーん、莉央ちゃーん」



陸が大きく手を振って、大声を上げて走り出した。



三人の挨拶もそこそこに、桂川君とも合流して蓮君の家へ向かう。



白を貴重とした、庭と縁側がある大きくて、綺麗な一軒家。



「やぁー、よく来てくれたね、いらっしゃい。うん、女の子がこれだけいると、華があっていいねぇ」



「こんにちは、いらっしゃいませ」



玄関でお兄さんと莉音ちゃんに迎えられる。



「陸、私のお部屋見せてあげる、来て」



「うんっ! お姉ちゃん、僕莉音ちゃんのお部屋行ってくるっ! お邪魔しまーすっ!」



「ご迷惑かけないでね」



「はーいっ!」



素早く莉音ちゃんが陸の傍に行き、陸と手を繋いで中へ入ってしまう。



そして、私達女子三人はというと、目の前でニコニコしているお兄さんを見ながら、驚きのあまり固まっていた。



どうしても蓮君を軸に考えてしまっていたからか、まさかこんなに表情豊かで明るく、気さくな人が出てくるとは思わなかった。



何だろう。お兄さんが口を開いた瞬間、空気がふわっと明るくなった気がした。



しかも、想像してたより数倍イケメンで、色気が物凄い。



「何か……凄い衝撃」



「うん、ほんとに兄弟かよーって感じ」



「でも、莉音ちゃんもだけど、美男美女な家庭なんだね。圧倒されちゃうね……」



中に促され、私達は家に上がる。



「あの、これ焼き菓子です。みなさんでどうぞ」



「おー、ありがとう。って、突然だけど、君が冴香ちゃんかな?」



名前を知られている事に、蓮君が絡んでいるのかなと思いながら、頭を下げる。



「はい。いつも弟の陸が、莉音ちゃんにお世話になってます」



「いやいや、こちらこそ。莉音は少し気が強くてお節介な部分があってね、陸君に迷惑かけてないか心配だよ」



そう言ってお兄さん―――蒼さんは苦笑した。



「いや、違うな。迷惑掛けるのは、蓮の方かな?」



この含んだ言い方は、蓮君は一体どこまで話しているんだろうか。



蒼さんと話していると、玄関の扉が開いて蓮君が袋を手に現れた。



「ごめん、レジが混んでて遅くなった」



「あ、蓮君、こんにちは。お邪魔してます」



私が言った言葉が聞こえているのかいないのか、こちらを見て止まっている。



少し大きめの白いパーカーを着て、いつもみたいに気だるげで、休みだからか少しだけ髪が落ち着いているせいか、幼く見える。



「冴香の……私服……」



小さく呟いた蓮君の言葉がちゃんと聞こえず、名前だけが聞こえたから「何?」と返事を返すと、無言でこちらに歩いてきて、私の前でピタリと止まる。



「私服の冴香も、めっちゃ可愛い」



「あ、あり、がと……」



お洒落をしているわけでもないのに、改めて言われると照れてしまう。



更に迫る蓮君から逃げるように後退る。



「抱きしめていい?」



「だ、駄目っ!」



「こら、蓮。やめなさい」



変な事を言う蓮君が私に迫る中、蒼さんに首根っこを掴まれて、引き剥がされて不満そうに眉を寄せた。



「こら、蓮、好きな子を困らせない」



納得いっていなさそうにしながらも、渋々冷蔵庫へ移動して、持っていた袋からドリンク達を取り出して直している。



「ごめんね。でも、蓮が女の子にあんなふうになるなんて、意外だなぁ。まぁ、女の子を連れて来るのも初めてなんだけどね」



「そう、なんですか……」



モテるし、彼女だっていた事があっただろうに、連れてきた事がないなんて。



付き合っているのに、家に呼ばないなんてあるものなのだろうか。



私はそういう経験がないから分からないけど、恋人はお互いの家に遊びに行くのは、普通によくある事だと思っていた。

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