第6話

今の園児は、幼稚園で婚活をするのか。



圧倒されてしまって、言葉が出ない。



とりあえずいつまでも、幼稚園で話してはいられないので、帰る準備をする。



「もう、陸。襟出てるよ。ほら、帽子忘れてる」



「あ、ほんとだ。莉音ちゃん、ありがとう」



何だろう。将来の二人の姿が想像出来るようで、ちょっと微笑ましくなる。



「俺も負けてられないな」



「変な対抗意識燃やさない」



言った蓮君に苦笑して、私達は幼稚園を後にした。



陸と莉音ちゃんは手を繋いで歩いていて、その後ろを私と蓮君が歩く。



「いいな……俺らも繋いどく?」



「つ、繋ぎません」



「ちぇ……冴香のケチ」



拗ねたように口を尖らせた蓮君がちょっと可愛い。



「毎日迎えに行ってんの?」



「ううん、両親が遅い時だけね。二人の仕事、忙しいから遅い時は夜中を過ぎるの。蓮君は?」



「うちも似たようなもんだな。そこまで頻繁じゃないけど、兄貴が来れない時は、たまにな」



「お兄さんもいるの?」



「あぁ、大学生の兄貴がいる。今日はバイトだから俺が来た」



蓮君が真ん中なんだと思うと、何だか分かる気がした。



「兄妹がたくさんいていいなぁ。賑やかで楽しそう。私もお兄ちゃんが欲しかったよ」



「そんなにいいものでもないよ? うちの兄貴女子力高いし、小姑みたいだし」



飯は美味いけどと付け加えた。



大学生で女子力の高い小姑みたいなお兄さんとは、物凄く興味がある。



私が興味を持ったのが分かったのか、蓮君が口を開く。



「今度兄貴いる時、家くる? 一緒に飯でも」



蓮君の提案に、惹かれる部分ばかりだったけれど、さすがにそこまで甘える訳にはいかなくて、断ろうとした時だった。



「僕、莉音ちゃんのお家行きたいっ!」



歓喜に満ち満ちた陸の声がして、キラキラした目を向けられる。



「で、でも、……さすがにそんなの悪い」



「私も、陸とご飯食べたいな」



今度は莉音ちゃんに、物凄く悲しい目で見つめられる。



こんなの、断れる訳がなかった。



「わ、分かりました……じゃぁ、お兄さんの許しが出たら、お願いします」



私がそう言うと、喜んだ陸は莉音ちゃんと両手を繋いではしゃいでいる。



こうして、一緒にご飯を食べる約束をしてしまった。

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