第21話

後ろから目を塞がれていると、そのまま体をクルリとジェードの方へ向かされて、抱きしめられる。



「申し訳ありません、せっかく来て頂いたのですが、セレア様のご気分が優れないようですので、今日の所はお引き取りを」



「まぁ、それは大変だわ」



ジェードに抱き抱えられ、私は二人を見る事も許されなかった。



ジェードの力が、想像以上に強かったから。



部屋に強制送還され、私はベッドへ座らされる。



「もう、大丈夫?」



ベッドに座る私の前で跪いて涙を拭い、そのまま頬を撫でる。



ジェードが少し違って見えるのは、いつもの彼の優しい微笑がないからだろうか。



「ねぇ、セレア。正直に答えて」



真剣な顔で見つめられる。



何を言われるのかと緊張しながら、ジェードの顔を見つめ返す。



「セレアは、グラウス様が好きなの?」



ドキリとする。



私がグラウス様にべったりなのは、さすがに知ってはいただろうけど、まさか好きなのかとこんなストレートに聞かれるとは思わなくて、呆然としてしまう。



「肯定と受け取るけど、いい?」



私は頷いた。



「そっか」



ジェードが少し悲しそうに、困ったように笑った。



「セレアが選んだのなら、俺は何も言わないよ。ただ、彼のせいで大切なセレアが泣くのは許せないな」



「違う、そうじゃなくてっ……」



「分かってるよ。あの姫君だよね」



ジェードは本当に人をよく見ている。



少し話を聞いてもらって、だいぶ心が軽くなった。



一人になった私は、部屋にあるバルコニーに出て風に当たる。



最近の自分は、前のネガティブな自分に戻っている気がする。



彼を好きになればなるほど、どんどん臆病になっていく。



せっかく転生して、改めて生きるチャンスをもらったのだから、今度こそ幸せにならなきゃもったいない。



新たなる気持ちで進む為には、中途半端にウジウジしてちゃ駄目だ。



自分に喝を入れて、拳を握り締める。



「負けてられない。よし、やるぞっ!」



深呼吸して、気持ちを改めるように空を見上げた。



憂鬱な気持ちを吹き飛ばしている私の耳に、扉がノックされた。



「セレア様、お手紙ですよ」



扉が少し開き、アリヤがひょっこりと顔を出した。



可愛らしい字で書かれたその手紙は、レティアからのパーティーへのお誘いだった。



何とも言えない気持ちで、パーティーへ行く旨を伝える手紙をアリヤに預けた。



噂好きが功を奏してか、彼女の人柄もあってか、アリヤから誰が来るのかなどの情報をもらった中に、アレアド様はもちろん、カイシュ様、そして、グラウス様の名前があった。



心臓が嫌な感じで高鳴る。



さっき誘ったのだろうか。そう思うだけで、嫌な汗が出る。



しかし、こんな事くらいで動揺していては駄目だ。

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