第14話
片方を腰に、もう片方を顎に添えられ、アレアド様が私に優しく笑いかける。
「セレア、いつになったら私の元へ堕ちて来てくれるんだ?」
「あ、あの、アレアド様っ、離してっ……」
「何故? 私の気持ちは分かっているだろ?」
更に近づいてくるアレアド様から、出来るだけ背を反らして逃げる。
―――ガサガサッ。
草が揺れる音がする。
そちらを見て、私は目を見開いた。
「おっと、これは失礼。大変な時にお邪魔してしまったみたいだ」
驚きのあまり、言葉が出てこず、口をパクパクとするしか出来なかった。
「大変元気そうで安心しましたよ、姫様。では、俺はこれで」
笑っているはずなのに、目が怖くて。なのに、体が恐怖とは違う、よく分からない感覚でゾクリとしてしまう。
アレアド様の手が緩んだ隙に、私は走り出した。
「お、お待ち下さいっ! グラウス様っ!」
私よりだいぶ大きな体は、どんどん離れて行ってしまう。
走っても追いつけなくて、行ってしまうと思うと、走って苦しいのとは違う苦しさに、涙が滲む。
「……かな……ぃでっ……」
手を伸ばしても、届かない。
足が縺れて床に倒れた。
涙が流れる。
「セレアっ!」
名を呼ぶ声がして、涙と共に感情が溢れる。
「大丈夫かっ!? 怪我はっ!?」
「ひっ、くっ……行か、なぃでっ……行っちゃ、やだぁ……」
幼い子供のように泣きじゃくる私を、優しく温かく包み込む大きな体。
しがみついた私の髪を、大きな手がゆっくりと撫でる。
「分かった。分かったから、泣くな……お前に泣かれると、困ってしまう……」
しがみついたままの私を軽々と抱き上げると、グラウス様は私の部屋へ向かって歩き出した。
転んだ時に擦りむいた膝の汚れを、丁寧に洗い流してくれたグラウス様が、膝に顔を近づけた。
「まったく、お前は私を焦らせるのが上手い。痛むか?」
「だいじょ……ぁ、グラウス様っ!? あの、何っ、を……んっ……」
まだ血が滲む膝の怪我の部分に、グラウス様の熱い舌が這う。
ピリリと痛いのに、甘く痺れる。
「汚いっ、からぁ……ダメっ、んゃっ……」
「駄目と言う割には、手当してるだけで、いやらしい声が出てるぞ……」
煽るように、傷口を舐めながら目だけでこちらを見上げる。
傷口じゃない部分、体の奥の方がゾワゾワして、疼いてくる。
グラウス様の唇に視線を合わせる度、昨夜の熱いキスが頭を過ぎって、どんどん体が熱くなる。
「傷を舐められて、感じてるのか? 淫乱なお姫様だな……物欲しそうな顔までして」
「グラウス、様ぁ……」
「何だ? 誘ってんのか?」
この体の熱さを鎮めて欲しくて、縋るようにグラウス様の首に手を回した。
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