第三章
第13話
目覚めた自分のベッドで、羞恥にのたうち回る。
何て大胆な事をしてしまったのかと、恥ずかしすぎてベッドに潜り込んだ。
ノックの音に、体がビクついた。
「失礼致します。セレア様、起きてらっしゃいますか?」
ジェードの声に、ベッドから少し顔を出して答える。
「おはようございます、セレア様」
「おはよぅ……」
温かい飲み物を持って入ってきたジェードが、それを置いて私のベッドへ歩み寄り、跪く。
「もう体調は大丈夫?」
心配そうにベッドを覗き込んで、眉を下げるジェードに、笑いが出た。
捨て犬のような顔で心配するジェードが、可愛すぎて「大丈夫、ごめんなさい」と謝っておいた。
ジェードが言うには、グラウス様が気を失っていた私を横抱きで入ってきたらしい。
昨日の事を思い出し、私は顔が熱くなる思いで、ベッドにまた潜り込んだ。
「今日は一日安静にする事、何かあったらすぐに言うんだよ? いいね?」
「うん、心配かけてごめんね……ジェード、ありがと」
言うと、ジェードは二人の時にしか見せない笑顔で、くしゃりと優しく笑って、私の頭を撫でた。
本当にジェードは優しい。
こんなにも優しくて可愛い彼をイジめるだなんて、セレアは何を考えているのだろう。
用意して貰った紅茶を一口飲んで、窓に歩み寄る。
外は晴天で、無性に外へ出たくなった私は、バルコニーへ出る。
風が心地よくて、空に顔を向けて目を閉じた。
「もういいのか?」
「ひぇっ!?」
下から聞こえた声に、驚き過ぎて変な声が出てしまう。
「おはよう、よく眠れたかな? 私の可愛いセレア姫」
「あ、あ、アレアド様っ!?」
何故彼がいるのか。そもそも、私の可愛いって言ったのは、どうなってるんだ。
昨日主人公と会ったはず。
彼は彼女に心を奪われるはずなのに、奪われていないのか。
一体どうなってるのだろう。
まさか、私がこの世界でその通りに動いていないせいなのか。
どうしたものか。
「君が心配で、仕事の合間に来たんだよ」
「わざわざ、お忙しいのに?」
「君の為ならいついかなる時であれ、飛んでくるさ。少しでも顔が見れてよかった」
気になったので、聞いてみる事にした。
軽く着替え、アレアド様に少し待ってもらい、下へ降りる。
挨拶もほどほとに、庭を散歩しながら昨日の事を切り出した。
「そういえば、昨日少しご挨拶された姫君は、大丈夫だったのでしょうか。私ちゃんとご挨拶出来なくて、ずっと気になってたのですが……」
「レティア姫の事か? 気になるなら、茶会にでも誘って見ればどうだ?」
出た。お姫様と言えばお茶会。
「そ、そうですね。考えておきます。それより、アレアド様はレティア姫の事、どう思われました?」
「どうとは? 何が聞きたい?」
「いや、あの、ほら、凄く可愛らしくて。男性ならああいう方がお好みなのかと……」
それとなく聞いて見るけれど、これが裏目に出た。
我ながら誤算だった。
「心配しなくても、私はセレア、君一筋だ」
腰に手を回され、引き寄せられる。
距離が物凄く近くて、綺麗な顔が視界いっぱいに飛び込んできた。
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