第11話
明るい音楽に、煌びやかな装飾、美味しそうな料理。
プレゼントの山の前で、私は絶句する。
相変わらず凄い量のプレゼントだ。
歳を重ねる毎に、増えてる気がするが、気のせいなのだろうか。
「やぁ、セレア、お誕生日おめでとう。これは僕からだよ」
挨拶もそこそこに、カイシュ様に小さな小箱を渡され、開ける事を促されて、目の前で開ける。
そもそも、この王子はこんなとこにいていいのだろうか。
この王子は自由過ぎやしないか。
箱には高そうな宝石が入っていた。
「こんな高価そうなもの、頂けません」
「わざわざ君の為に、貴重な石を取り寄せたんだ。そんな悲しい事を言わずに、貰ってくれないか?」
眉を下げ、苦笑するカイシュ様に言われ、断る事も出来ず、仕方なく貰っておく事にした。
やはり貴族や王族のやる事は理解できない。
高価なものが当たり前に手に入ると思ってる辺り、やっぱり好きになれない。
「僕の誕生日には、君をプレゼントしてくれてもいいんだよ?」
カイシュ様が私に耳打ちしてくる。無駄にいい声で囁いてくる。
「カイシュ様ったら、またそういうご冗談を」
自然にカイシュ様の体を押し返し、気づかれないくらいに、ゆっくりカイシュ様との間を開けて後退る。
「おっと、見つけた。こんな所にいたんだな、探したぞ」
体がぶつかり振り向くと、アレアド様の手が両肩に置かれていた。
「プレゼントを持ってきたんだが、受け取ってくれるかな?」
肩に手を置いたまま、顔だけで彼を見上げていると、ふわりと笑ったアレアド様が私の顎に指を這わせる。
「君に似合うと思ってね」
アレアド様が誰かを見ると、それを合図に平たく大きな箱を持った男性が現れた。
「ここで開ける訳にはいかないから、とりあえずこれは私からだと覚えておいてくれ」
そう言って、額に口付けられた。
少しザワついたところで、入口がそれ以上にザワついた。
そちらに目を向けて、その人物が目に入った私の体は、自然とそちらへ向かう。
呼び止める二人を気にする事なく、私はそちらへ一直線に歩いていく。
居心地悪そうにキョロキョロしている注目の的に、私は走り寄って声を掛けた。
「よくお越しくださいました、グラウス様。お待ちしておりましたわ」
姫らしく、お客様をお迎えするのに習ったお辞儀をして見せると、一瞬驚きを見せたものの、それにお返しのお辞儀が返ってくる。
いつものラフな格好とは違って、今日は正装をしているのが、物凄く格好いい。
「今日はちゃんとしたお姫様に見えるな」
「グラウス様こそ、凄く素敵です」
少し近づくと、後ろから肩を抱かれた。
「セレア、この方を紹介してくれるかな?」
「私も是非お願いしたいね」
左にカイシュ様、右にアレアド様と二人に挟まれながら、何とも言えない空気が流れる。
正直なところ、グラウス様はある意味有名なはず。それは、この会場の招待客の態度を見ればよく分かる。
グラウス様も言っていた。自分は、没落貴族なのだと。
「こちらはグラウス様、私の招待客ですわ。グラウス様、こちらがアレアド様、こちらはカイシュ様」
「失礼ながら、お二人のお名前は存じ上げております。お初にお目に掛かります」
妙な雰囲気の中、私がいたたまれなくなってきた時だった。
「お話中失礼致します。姫様、ご挨拶されたいという方がいらっしゃっております」
いつの間にかそばに来ていたジェードの後ろにいる人物に、心臓が大きくドクリとする。
来た。
主人公だ。
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