第2話
月日が経つのは早いもので、私はあっという間に成長し、十七なった。
体も大人になりました。
あの頃の私とは大違いなほど、肌は白くキメ細やかで、胸もなかなかにたわわ。腰のラインはしなやかにくびれていて、お尻も引き締まって、スラリと伸びた足も、自分で言うのもなんだが綺麗だった。まさに申し分ないスタイルだ。
美しい悪女。
しかし、私に悪女は向いてないのは、私が一番よく分かってる。
だから、私はこの生まれ変わりのチャンスを有難く堪能させて頂く事にした。
「セレア様、お茶が入りました」
「ありがとう」
紅茶を運んで来たのは、私専用執事のジェード。
サラサラの黒髪に整った顔立ちで、目元の泣きぼくろがセクシーな、イケメンだ。
彼は、私が六歳の頃に、執事見習いとしてこの屋敷に来た。
本の中ではセレアに酷く扱われていたけれど、私はしない。
しないというか、出来ないのだ。
虐めたら可愛いでしょう。それは物凄く可愛いと思う。
しかし、私にそのスキルはない。
「セレア様、また零されてますよ」
私がどれだけドジを踏んでも、どんな大きな失敗をしても、全てを完璧に収めてしまう。
完璧執事。まさにこの言葉がぴったりだ。
彼は昔から揺るがないし、ずっと私の傍で私を助けてくれた。
実は彼は、私の生まれ変わりを信じてくれている。
彼は、この世界で、唯一の理解者だった。
「セレア、全く君は……ほら髪、クリーム付くよ」
髪を耳にかけてくれて、ふわりと笑う。
そう。これが彼の素である。いつも甘くて優しく囁いて笑う。
小さな時から一緒にいて、兄妹みたいに育ったからか、やたらと甘やかされてしまっている。
これは駄目な奴だ。駄目人間になってしまう。
「何か……ジェードがいないと私生きて行けなくなっちゃいそう……」
「……(そう仕向けたんだから当たり前だろ)……」
「え? 何か言った?」
「いや、何も。それより、もう少ししたら、アレアド様が来る時間じゃないの?」
「あー、そうだった……。月日が経つのは早いものねぇ。でも……私、あの人苦手……」
「知ってるよ。でも、向こうはかなり必死で君を欲しがってるようだけどね。……(渡すつもりはないけど)……」
ジェードが何か言った最後の言葉がよく聞こえなかったけど、それより、アレアド様が来る。
公爵であるアレアド様は、社交界で私を見て一目惚れをしたらしい。
でも、アレアド様は主人公と結ばれるはずだし、何より私はアレアド様が苦手だ。
あの何を考えてるのか分からない、黒い何かを抱えてるようなところが、物凄く、怖い。
ヤンデレ的な匂いがする。危険だ。
そして実は、私にはもう一人苦手な人がいたりする。
そのうち私は人間不審になるんではと思う。
「ああ、ここにいたんだね。今日も美しいね、僕のセレア」
来た。アレアド様より先に。苦手二号が。
「カ、カイシュ様っ!?」
この無駄にキラキラしている方は、王子であり、時期国王であるカイシュ様。
存在自体がキラキラしてるのに、金色の髪とブルーの瞳に、鬱陶しいくらいに爽やかな笑顔が彼をもっとキラキラにする。
これが一番苦手です。
私は爽やかキラキラ系王子が、凄く苦手です。
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