貧乏な私が裕福な悪女に転生してしまいましたが、溺愛もされているので残りの人生楽しみたいと思います【グラウス編】

柚美

プロローグ

第1話

転がる小銭。



小銭くらいで必死になって、挙句にそんなもんの為に死ぬなよって思うかもしれませんが。



私には、この小銭が命を繋ぐ唯一のものだったのです。



トラックに撥ねられた時には、もう私に意識はありませんでした。



でも、孤独だった私の人生はいい事なんてひとつも無かったから、別に後悔があるとかもないし、悔いもない。



どうなったって、どうでもいい。



私なんて、いてもいなくても。



あぁ、でも、もう一回くらいあの大好きな本は読みたかったなぁ。



小説のような絵本。お気に入りで、何度も何度も読み返して、大切にしていた。



それももう、読めなくなってしまった。



目を覚ました私の目に一番に飛び込んで来たのは、豪華で綺麗なシャンデリアと美人で優しそうな女性。



誰だろう。こんな優しい顔して微笑む人、私は知らない。



「セレア、これが気に入ったの? ふふふ」



セレアって、誰だろう。



というか、小さい手が目の前をチラチラ映るんだけど。



しかも、私この綺麗な人の膝に座っているような気がするんだけど。



「あらあら、どうしたの? 歩きたいの?」



動くのは可能なようで、しかも地面が近い。



ありえないくらい巨大な鏡を前に、固まる。




二歳くらいの子供が目の前にいる。髪は薄い水色で目は輝く宝石のような金色。物凄く可愛い。かなりの美少女だった。



そして私は、この子を知っている。



ん? 待って。私が鏡でこの子を見てるこの状況は? というか私、事故に遭ったはずなのに、何で意識があるの?



「あら、お父様が帰って来たみたいね。おかえりなさいしましょーねー」



母親らしき美人な女性に抱き上げられると、私の視界も持ち上がる。



この子、私だ。



理解してしまった。



今の私はセレア。何処かのお金持ちの娘で、超絶可愛い。



私は、違う人間、それもお気に入りだったあの話に出てくる主人公に、やたら意地悪で嫌がらせばかりする悪女に、生まれ変わったようだった。



主人公じゃないだけマシか。主人公は私には荷が重い。不安だけど。



これからどうなってしまうのだろうか。

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