第七章

第34話

貴也の会社に事務として働けるようになり、今日が初日。



まぁ、大した学歴がある訳でもないから、前の会社とやる事はたいして変わらないのは、当たり前といえば当たり前だ。



そして、私が社長の妻だというのは、もちろん内緒にしてもらっている。



やっぱり仕事にやり辛さがあるのは、勘弁して欲しいから。



目立たず、ただ毎日静かに地味に平和に過ごせればいい。



ただ、私が今気にしている事が二つ程ある。



一つは、あのパーティーで会った、貴也狙いの女性社員。



彼女は私を知っている。



鉢合わせなんてしたら、あっという間に広まってしまうだろう。



多分彼女は、私の予想が正しければ、黙っているタイプじゃないだろうから。



もう一つは、貴也と街でいた彼女だ。



タイミングが合わず、まだあの人の話しは聞けていなかった。



蒲田さんに聞いた事があるけど、社長に聞いて下さいと言われて終わった。



初日だというのに、モヤモヤしながら昼休みが終わり、午後に差し掛かる。



たまたま手が空いたので、資料室で資料の整理を引き受けた。



今日はこれで仕事が終わるので、ゆっくりでいいから覚えるようにと言われた。



なかなか温かい職場で、初日からホッと安堵する。



資料室に案内してもらい、一人メモを見ながら整理を始める。



みんな片付ける暇がないのか、やらない人がいるだけなのかは分からないけど、なかなかやりがいがある。



バラバラに並ぶ資料を取り出し、順に並べて行く。



こういう単純作業は好きだ。



我ながら雑用がしょうに合っていると思う。



奥の方にいたからか、扉が開く音が微かにしか聞こえず、人が入って来ている事にほとんど気づかなかった。



「へぇー、制服姿もなかなかエロいな……」



「ひっ! び、びっくり、した……」



後ろから耳元で、聞き覚えのある低い声が響く。



「貴っ、社長……いつからいたんですか?」



「ほんとに今だよ。ちょっと様子見に行ったら、資料室だって言ってたから。どう? やってけそ?」



「はい。皆さん優しくて、いい方達ばかりです」



誰もいないとはいえ、一応は会社内だから、社長と一社員という立場は守りたい。



「あ、あのっ……」



「ん? 何?」



腰に手を回され、引き寄せられる。



手で体を押し返そうとするけれど、ビクともしない。



「だめっ……ここっ、会社っ……んっ……」



スカートの上から、お尻を撫で掴み回しながら、首筋に舌が這う。



「いいねこのシチュエーション……その格好もそそるし、むちゃくちゃ興奮する……」



「貴也っ、ちょっとっ……こんなとこでっ、興奮しないでっ……」



顔を背け、両手で貴也の顔を押す。



「ここは会社だよ。社長、だろ? 教育がなってないな」



何かのプレイが始まってしまう。



これに乗らないと、離してはくれなそうだ。



「しゃ、社長っ、やめて、下さいっ……」



「っ……ほんっとにっ……迪香は俺が喜ぶツボを容赦なく突いてくるよな……。それ天然でやってんなら、迪香のがタラシだろ」



失礼な。私は誰彼構わずこんな事しない。



「本当にっ、だめっ、ですって……やっ!」



「スカートちょっと短くないか? 迪香の綺麗な足と可愛いお尻が、他の男に見えるだろ。これは改善しないとだな……まぁ、下着脱がせるには楽だが……」



足から手を滑らせ、スカートに手を入れ、下着に手をかける。



必死で手を押えて抵抗するけれど、いとも簡単に両手を拘束され、頭の上に上げられる。



「何か、レイプでもしてるみたいだな……これはなかなかやばいな……。迪香相手だと、どんどん変な性癖目覚めるわ」



上の服のボタンが外されて、ブラをずらされ、胸が露わになっている。



下に関しては、もう始めの辺りから下着など意味をなしていない。



「触ってないのに、ここ、こんなに尖ってる……可愛いな……」



「やっ、ああっ!」



ねっとりと胸の突起を舐め上げ、咥えて吸われ、もう片方も指で転がされて、遊ばれる。



「あんっ、あっ、ゃ、やだっ、全部はっ、だめっ……ひああぁっ!」



そのまま刺激が続く中、手が解放された瞬間、下の突起にまで手が伸び、指でダイレクトに擦られて体が跳ね上がる。



「ん……はぁ……今ちょっとイった? いつもよりもっと敏感になってんね……ほんと、可愛い……ンっ……」



再び愛撫に戻る貴也に、私はどうにも抵抗する術がなくて、物凄い快楽に涙を浮かべながら、喘ぐしかなかった。



「もうぐちゃぐちゃだぞ……どこもかしこもえっろいな、ほんと……」



「実況しなくてっ、い……からぁ……」



意地の悪い顔で笑い、優しく纒わり付くキスをされ、その甘さに酔いしれる。



目を閉じる事なく、キスをしながら見つめられると、羞恥と興奮に気分も高まってくる。



「そんな煽るみたいな、エロい顔して泣くなよ……優しく出来なくなる……」



煽っているつもりはない。こっちも快感に耐えるのに必死なのに。

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