愛はないけれど、お金持ちだったので結婚しました。

第20話

スマホの通話ボタンを押し終わり、すぐさま貴也さんの耳に持っていく。

貴也さんと目が合い、口の動きだけで「いい子」と言って、少し意地の悪い笑顔を浮かべる貴也さんに、変にドキドキしてしまう。

相手は蒲田さんのようで、やっと解放されると思い、ゆっくり一息吐いている私の腰を貴也さんの片方の腕が抱くように触れる。

カサカサと音がし、見ると貴也さんの手にはゴムの袋が。口で器用に破り、下半身辺りでゴソゴソし始める。

確かにさっきから彼のモノが当たる感触はあった。大きいからすぐに分かる。

でも、今は電話の向こうに蒲田さんがいる。

どこまで聞こえるかは分からないけれど、全く聞こえないなんて絶対にない。

首を振って腰を引こうとするけれど、想像しているより貴也さんの腕の力が強くて逃げられない。

「……っ……」

擦り付けられて、声が出そうになるのを、唇を噛んで耐える。

「っ！！？」

私の腰を両手で掴み、貴也さんの大きくなったソレが入ってくる。

声にならない声で呻き、必死に息をしようとする私の様子を見てニヤリと笑った貴也さんを、涙が滲む目で軽く睨む。

スマホを支える手が震えて、落としそうになるけれど、力を入れて耐える。

「またそんなエッチな顔で睨む……煽るだけだって言ったはずだよ？」

耳元で囁き、貴也さんは楽しそうにクスリと笑った。

最近はほんとに意地悪だ。

社長になるくらいだから、優しいだけの人だとは思っていなかったけど、たまに子供みたいな意地悪をする。

電話をしながら、私にも構うなんて器用な人だ。

彼の腰は止まる事はなく、ゆっくりだけれど出し入れを繰り返している。

それがまたもどかしくて、ゾクゾクが止まらない。

相変わらず蒲田さんとの話は続いている様で、平然とした顔で話をするけれど、その熱のこもった目は私を捉え続けている。

恥ずかしいくらい、まっすぐに見つめるのは癖なんだろうか。

「ひっ……ぅっ……はっ……」

突然強く突き上げられ、声が漏れてスマホを手から離してしまう。

素早くスマホを持ち直し、貴也さんは何事もなかったかのように、またゆっくり腰を動かし始めた。

「ぁ……ゃ……ン……」

奥まで挿入されたまま、そこばかりを叩かれるように、刺激されるとたまらなくなって、声が我慢出来なくなる。

腕の力なんてもう入らないから、貴也さんの上にうつ伏せになる形でしがみつき、ただ与えられる快楽に耐える。

どんな電話をしてるかなんて、もう考えられない。

急に律動が激しさを増し、もう声を抑えられるはずもなくて、貴也さん以外の人に、あられもない声を聞かれているのだという恥ずかしさに、涙がボロボロ零れた。

「ああっ、あっ、ンっ、やだっ、ぁっ、酷ぃっ……あぁっ……」

「ははっ……くっ……もうっ、電話は、切れてるよっ……君の可愛い声を他の奴に聞かせるわけないだろっ……んっ、安心した？」

頬を両方の手で包まれ、親指で涙を拭って目元に唇が触れる。

優しいキスに、絆される。

その後何度か抱かれた後、用意していたらしいスーツに身を包んだ貴也さんが、私が疲れて横たわるベッドに腰掛け、頭を撫でる。

「俺は仕事に行かなきゃいけないけど、部屋はまだ借りているから、君はまだ寝てるといい」

「いって、らっしゃい……」

微睡みの中、優しく笑って「いってきます」と言った貴也さんから頭にキスが落ちる。

そして私は、幸せな気持ちのまま、意識を手放した。