第5話

逃げる隙を与えないとでも言うように、私の腰を両手でしっかり掴んで固定する。



「えっ……やっ、だめっ! ゃああぁぁっ!」



「ごめっ、はっ、ごめんっ……俺、まだっ、収まらなぃ……」



もう少し付き合ってくれと言われて、再び動き始めた腰の動きに、翻弄される。



その後何度も突き上げられ、その度にあられもない声を上げる。



こんなの、知らない。こんなの、私じゃない。



「気持ちよすぎっ、腰がっ、止まらなっ……」



「あっ、あっ、もっとっ……ぁあんっ、きもひっ……ぃ、ん、あっ、あぁっ、はぁっ、たかっ、やぁ……」



唇に噛み付いて、舌を絡める気持ちよさと、奥を突かれる気持ちよさのどちらもが頭を痺れさせ、更に胸の突起を抓られ、体が跳ね続けて、連続で達する。



意識が飛んでしまってはまた快楽に引き戻されるを繰り返し、喘ぎ声も既に声にならない。



「ぁあ、ひっ、はっ、ふっ、ぁっ……」



「イキ、すぎてっ……はっ、飛んだ? あっ、ふっ……俺も……気持ち、よすぎてっ、まだっ、出て、るっ、ヤバいっ……くらいっ、出っぱなしっ……んんぅっ! またっ、くっ、出るっ!」



お互いがカオスな状態で、行為を繰り返し、気づいたらもう日が登っていた事に、二人して驚愕したのは言うまでもない。



そして今に至る。



「本当に申し訳ないっ!!! もういっそ埋めて下さいっ!」



目の前で土下座以上に床へめり込むのではないかと言うほどに、見事な土下座を披露されては、怒るに怒れない。



ある意味、私もそこまで嫌な思いをしたわけでもないし、むしろ気持ちよくしてもらったようなものなのだから、怒るのは違うような気もしなくもない。



純な乙女という歳でもあるまいし、ただ縁がなかっただけで、特に純血を守ってきた訳でもないのだ。



「あの、頭を上げて下さいっ! だ、大丈夫ですからっ! 私もその……気持ち、よかった、ので……」



顔を上げた貴也さんが、半泣きになりながら目を輝かせている。



「本当にあなたは優しいんですね……」



どうやら感動しているらしい。



「初めては痛いって聞いていたんですが、痛みもなかったし……」



「そうですか、それはよかっ……な、は、初めてっ!?」



私が言った言葉を聞いて、次は固まった。



やっぱり私くらいの歳で処女なのは、珍しいものなんだろう。



固まったままの貴也さんに声を掛けて、気にしないように言ったのだけれど、またも床にへばりついた。



この時ばかりは、床が綺麗でよかったと思った。



「女性に大切な初めてを、こんな最悪な形で奪ってしまって……俺は何て事を……」



今度は頭を抱えてしまった。



そこまで気にする事でもないのに。



あんなに激しく人に求められた事なんてないから、少し嬉しくもあったのだから。



「貴也さん。本当に大丈夫ですから」



私はできるだけ罪悪感を取り除いてあげられるように、何度も大丈夫を繰り返して笑う。



いつの間にか顔を上げていた貴也さんが、そっと私の手を握る。



「……言い訳みたいになるかもしれませんが、聞いてもらえますか?」



苦笑して、貴也さんが重い口を開いた。

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