第28話

迎えの車に乗り込む。



初めて乗るリムジンに、キョロキョロしてしまう。



「君達に会えた嬉しさに、奮発してしまったよ」



心底嬉しそうにしている宝良さんの隣には、秘書の仕事モードから奥様モードになった白木さんが、お洒落をして座っていた。



本当に美男美女でお似合いのご夫婦で、憧れてしまう。



「二人共、服もよく似合っているね。さすが僕の雨音が見立てただけはあるね」



言って、雨音さんの頬に口付ける。



何をしても絵になる素敵な二人。



談笑している間に、店に着いて車を降りる。



凄く高そうなお店を前に、少し緊張してしまう。何から何まで豪華だ。



失礼にならないようにしないといけない。



「そんなに気負わなくていい。食事を楽しんでくれたらいいよ。僕は君達をもてなしたくて誘ったんだからね」



ウインクして見せた宝良さんに、ぎこちなく笑い返すしか出来なかった。



気持ちは嬉しいけれど、そう簡単にはいかないものだ。



「塩谷さん。緊張する気持ちは分かります。元々ごく普通の庶民の生まれなんで、実は私もこういうのが苦手で、いまだに慣れませんから」



苦笑する白木さんに言われ、少し気が楽になる。



同じような人が隣にいるだけで、気持ちは全然違うもので、食事を始めると結構楽しんでいる自分がいた。



どの料理も美味しくて、お酒も進んでしまう。



楽しい時間はあっという間で、酔いがいい感じに回り始めたくらいに、お開きとなった。



「いやぁー、久しぶりにはしゃいでしまったよ。楽しかった、ありがとう」



「こちらこそ、何から何までありがとうございました」



「今度は仕事じゃなく、プライベートでもいらして下さいね」



「はい、是非」



ホテル前まで送ってもらい、二人に別れを告げて、部屋へ戻る為エレベーターへ。



酔いが回って少しふらつく私の体を、海吏が支えてくれる。



「ふふ、ありがとう」



「お前、結構酔ってるな。よく二人の前で普通に出来てたな」



「一応失礼があったらダメだからねー」



二人と別れて気が抜けたのか、保っていた意識が少しお酒に負け始める。



海吏に体を預け、額を擦り寄せて首筋に口付けた。



「誘ってんの?」



「うん……」



「エッチな気分になってきた?」



耳元で低く囁く海吏の甘い声に、お酒で火照った体が、違う意味で熱くなる。



「こりゃ、他の奴の前で酒飲ませらんねぇな」



「海吏ぃ……」



「はいはい、もうちょい我慢な」



子供みたいにイヤイヤと首を振りながら駄々をこねる私を、海吏は軽々と抱き上げた。



抱っこされる体勢で、海吏の首に抱きついて移動する。



部屋に入り、ベッドへ寝かされると、すぐに海吏の唇に食らいついた。



「んぅっ、んっ、ンっ……ふぁっ……」



「んっ……はっ……積極的なのはっ、嬉しいけどっ……っン、そんな急がなくても、俺は逃げないって……」



舐めたり噛んだりして、海吏の唇を味わいながら、私は海吏を押し倒す。



海吏の開いた脚の間に体を滑り込ませ、ベルトとボタンを外して、チャックを下ろした。



「何? してくれんの?」



ほとんどした経験はないけど、体がソレを欲しがって仕方ない。

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