第五章

第22話

仕事をしている私の体調は、すこぶる悪い。



それもこれも、私の隣で楽しそうに伸び伸びと仕事をする男のせいで。



散々抱き潰された私は、腰と体のダルさに苦しんでいた。



「瑞葵どうしたの? 大丈夫?」



「え? あ、うん、まぁ、ははは……」



私が苦笑すると、察しのいい遼介は同じように苦笑して「ご苦労様。いや、ご愁傷様かな?」と言った。



それを聞いていたのか、海吏が口を挟む。



「瑞葵のグズグズになった姿前にしたら、誰だって精子なくなるまで犯したくなるっつーの」



「へぇー、それは興味深いね」



仕事中に何を言ってるんだこの男は。それに便乗する遼介も遼介だ。



「黙って仕事しないと、口聞いてやんないわよ」



「おっと、それは困るね。じゃ、大人しく仕事しますか」



「だな。うちのお姫様は怒ると怖いからな」



お姫様という歳でもないのに、気持ち悪い事を言わないで欲しい。



ダルさはまだ残るものの、そんな事も言っていられないので、目の前の仕事に集中する。



雅也さんが集めただけの事はあり、他のメンバーも仕事が出来るメンバーばかりだから、なかなかスムーズに仕事が進んでいる気がする。



私はミーティングの為、資料を持って立ち上がる。



「ミーティング終わったら飯にしようぜ。ちょっと行きたい店があんだよ」



「いいけど、ガッツリは無理よ。あんたのせいで、あんまり食欲ないんだから」



「はいはいすいませんね。でも、あんだけ積極的に来られちゃ、全力で答えないと男としても彼氏としても、ね?」



ニヤリと笑い、耳元に近づいてそう言った。



顔が赤くなるのが分かる。



言われてみたら、確かに火をつけたのは私かもしれないけど、限度というものがある。



絶倫男には、程々にしてもらわないと身が持たないのだと改めて思った。



あまり刺激しないようにしないと、体がいくつあっても足りない。



体力をつけなければ。ジムにでも通おうかな。



なんて考えているうちに、ミーティングルームに着いた。



「やぁ、諸君、来たね」



中にはもう雅也さんが来ていて、隣には知らない女性が一人座っていた。



腰辺りまであるウェーブかがった栗色の髪を靡かせ、スタイル抜群のモデルのような綺麗なその女性は、立ち上がって高めのヒールをツカツカと鳴らしてこちらへ向かって来る。



「会いたかったわ、海吏」



突然、海吏に抱きついた。



抱きつかれた当の本人は、特に驚く事もなく、女性の両肩に手を置いた。



「離れろ。俺は別に会いたいとは思わなかったけどな」



「相変わらず冷たいわねぇ。仮にも付き合ってた相手に」



元カノ。



遼介も驚いているようで、私と目が合う。



雅也さんは特に気にした様子はなく、ただ見守っている。その表情は読めない。



「いつの話してんだ。付き合ってたって、二、三日だけだったろ」



「二、三日でも付き合った事に変わりはないでしょ。細かい男は嫌われるわよ」



二人の世界が繰り広げられる中、私の服を遼介が引っ張った。



「元カノの存在、聞いてた?」



私は遼介の質問に、首を振って答える。

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