第7話

脱力している私の膝裏を持ち、体勢を整えるように動いただけで、私は声を漏らす。



「ほら、意識飛ばすのはっ、まだまだ早い、ぞっ……」



「あっ、やっ、激しっ、ああぁ、あっ」



喘ぐ以外の方法がなくて、ただ鳴沢に翻弄される。



突き上げられて体を揺さぶられ、なすがままの状態で、また快感に身を沈めていく。



「はぁ、はぁっ、ぁ、もっ、ィくっ……」



「はっ、あぁっ、あっ、ぃああぁっ!!」



奥を強く擦られ、突き動かされ、何度も体を痙攣させて達した。



目の前がチカチカして、細く消え入るような声で、喘ぎの余韻を漏らした。



体の奥がまだジクジクと疼くみたいな感覚に、中に入ったままの鳴沢を締め付ける。



「んっ……何っ……まだ、足りない?」



息も絶え絶えに、鳴沢を目だけで見てぐったりしながら首を振る。



これ以上されたら、私はどうなるんだろうか。



考えるだけでゾワっとする。



それが想像出来ない怖さなのか、期待なのかは考えないようにしよう。



すっかり酔いが冷めたところで、今のこの状況が、物凄く大変な事なのだと言う事に、ふと我に返る。



羞恥と混ざってごちゃごちゃした考えが、頭を回る。



「何青くなったり赤くなったり、忙しい奴だな。百面相すんな、おもろい」



タバコを咥えながら、ふっと笑った鳴沢に、心臓が静かにトクンと震える。



何でこの男は、何事も無かったかのような態度が取れるのか。



ぐるぐると考えを巡らせていると、唇に柔らかな感覚がした。



軽く口付けられ、端正な顔が間近に映る。



「風呂行くけど、一緒に入るか?」



「は、入らないっ!」



顔が熱くなるのを感じて、シーツを頭から被ると、その向こう側から笑い声が聞こえた。



シャワールームへ消えていった鳴沢。



私はいたたまれなくなり、散らばった服を素早く身につける。



逃げるような事はしたくないんだけど、この状態で普通に鳴沢と話が出来る気がしない。



まだシャワールームにいる鳴沢に、心の中で謝って部屋を後にした。



帰り道は、下腹部に違和感を感じながら、必死に歩いた。



タクシーに乗り、無事家に戻ってシャワーを浴びた後、少し仮眠を取ったけれど、全く寝た気がしない。



疲れた顔に軽めのメイクを施して、スーツ型の仕事着に身を包み、仕事へ向かう。



スマホは見ていない。



見たら、何だか大変な事になっていそうで、昨晩電源を消して眠った。



とはいえ、逃げたところで今日も会うのだが、どうにか必要以上に関わらないようにするのが、とりあえずの今日の目標だ。



と、決心しながら、まばらに人が乗っているエレベーターに乗り、奥の端に寄った。



そんな事ばかりに集中していた私は、全然周りを見ていなかった。



「よぉ……さっき? ぶりか……」



「っ!!?」



耳元で声がし、体が固まる。



低い、ホテルで散々聞いた声。なのに、今ではあの甘い雰囲気は微塵も感じない。



ヤバいと感じた。



顔が、見れない。俯いてしまう。



「無事に帰れたみたいで何よりだな」



「ど、どうも……ひっ!?」



変な声が出そうになり、口を押さえる。幸い、誰にも気づかれなかった。



顔を少しだけ後ろに向けて、その男を睨む。



「んなエロい顔して睨んでも、煽るだけだぞ」



「っ……ふっ……」



意地の悪い顔で、ニヤリと笑いながら、私のお尻を揉んでいる。



いやらしく這う手に、体があの時の熱を思い出させ、奥が疼くようだった。



必死にその手を押さえるけれど、その手首を捕らえられた。



自分の降りる階に着いたのを知ったのは、手首を引かれて降ろされ、視界に遼介が見えた時だった。



「あ、おはよ……って、二人共何処へって、おいっ!」



不思議そうに声を掛ける遼介に何も答える事なく、鳴沢はどんどん早足で進んでいく。



そのまま人気のない、今では使われなくなった会議室に引き込まれて、鍵の音が妙に大きく聞こえた。



壁に背をつけて追い詰められる。



「鳴さっ……ん、んンっ!」



「はぁっ……俺、怒ってんだけど?」



「ゃ、んんっ、ふっ、ぁっ……」



深いキスをされながら、脚の間に脚を押し込まれ、そこで私の股の部分を擦る。



体がビクリと反応して、気持ちとは裏腹に声が甘くなる。



「マジで、どこまでもエロい女だよな、お前……」



「誰のせいだとっ……ぁ、んっ……」



「俺? なら、尚更最高じゃん……いいねぇ、たまんねぇ……」



楽しそうに笑った鳴沢が、また深くて激しい、噛み付くみたいなキスをする。



それが嫌じゃないから困る。



体が熱くなって、また体の芯がザワついた。



「期待してるみたいな顔してる……」



言われ、顔に熱が集まる。顔を逸らした瞬間、いつの間にかボタンを外されていたようで、パンツ型のズボンが下着ごと下ろされる。



声を出す間もなく、下腹部に何かが当たる。



考えるのに時間が掛かった。



まさか、仮にも会社で襲われるかのようにされるなんて、思ってもみなかったから、フリーズしてしまう。



「ふ、ぁあああぁっ!!」



「はぁ、っ、いいねぇ、その声っ……めっちゃ腰に来るっ……可愛すぎっ……」



思い切り奥まで挿入され、思っていたより声が出てしまう。



けれど、抱きしめるみたいな体勢だからか、手で口を塞ぐ事は出来ない。

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