第13話
予定よりも十分程度時間がかかったが、問題なく目的の場所へ到着した。駐車場と思われる場所に適当に車を置いて降りる。改めてスマホを確認すると、舞から電話がかかって来た。授業の合間か、気になって抜け出したのかどちらかだろう。
「おう、今ついたぞ」
「アオ、いる?」
「お前、その住所がなんだか知ってんのか?」
「わかんないけど、たぶん、アオのお父さんとお母さんがいるところかも」
「かも?」
「SNSのDMで、制服の動画あげた後くらいからメッセージ、割と頻繁に届いてて。アオは知ってて、でも、知らないフリ、してて。全部消すかブロックしていいって言われてたんだけど、一応、取ってあって」
「なんで今日、いきなり」
「一週間とちょっと前くらいから、ぱったりメッセージ来なくなったって、私、アオにそのこと言っちゃって」
古いアパートで、一階と二階にそれぞれ三つずつ部屋がある。外から見た限りでは人が住んでいるようにも、廃墟のようにも見える。
「ごめん、アオに余計なこと、言ったかも」
二階の角の部屋、玄関ドアが少し開いているように見えた。善助は速足で階段を上って真っ直ぐに部屋の前に行く。指定された部屋号室とも一致する。扉の隙間から、蠅が一匹、外に出て行った。
「――アオ!」
勢いよく扉を開ける。探す程の広さではない。真っすぐに廊下が伸びていて、突き当りの部屋のドアが、また半分くらい開いていた。「アオ、いるか!?」もう一度叫んで靴のまま上がる。奥の部屋に近付くと、夏の熱気と腐臭が体にぶつかってくる。一瞬怯むが、扉を開く。
「あ――」
アオの後ろ姿が見えた。座って、なにかを見下ろしている。
アオの前には、布団の上で手を繋いで死んでいる男女の姿がある。既に腐敗が進み、蠅がたかっている。
アオは、その死体を見つめていた。
まるで虫でも眺めているような目が印象的で、しばらく声がかけられなかった。
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