第11話

【赤原勇樹side】



どちらかと言えば、派手でスタイルのいいエロい女が好きだ。巨乳なら尚よし。



いつも通り、たまり場にしている廊下へ向かう。



「おっと。ちゃんと前向いて歩かなきゃ、危ないよ〜?」



春樹が止まるから、玲も止まる。そしたら、自然と最後尾の俺も足を止める形になる。



何事かと思い、横にズレて見てみると、少し震えて固まっている地味な女。



今時こんな地味な奴いんのかと思った。



全く俺の趣味じゃねぇから、興味がなくて、ただ琉玖夜達の話に適当な返しをしていた。



その後から玲が言うには、琉玖夜が地味な女にゾッコンラブというやつらしい。



なんじゃそりゃ。



とりあえず夢中だという。



そういう玲も、地味子に興味があるらしい。



そんなに魅力的な女には見えねぇけど。



両隣りにいる女達を適当に見ながら、やっぱ俺はこういう派手でエロい女のが合っていると、改めて思った。



そう、思っていた。



琉玖夜が地味子にキスをした。それもなかなかに深いやつ。



その時の地味子の顔とか声に、体がゾクリとした。



は? なんだコイツ。



自分で自分が信じられなかった。



その後、いつもみたいに派手な女じゃなく、初めて地味な女に声を掛け、抱いた。



マジでありえねぇ。



女なんて、適当に優しくして、適当に気持ちよくして、突っ込めればどうだってよかった。



目の前にいる黒髪の地味な女が、あの女と被って見えて、ありえないくらい興奮している自分がいた。



「五回とか……イカれてるわ……」



好きでもねぇ女相手に、初記録を叩き出した自分に苦笑してしまう。



我ながら重症だと思う。



俺はあいつに、欲情したんだ。



廊下ですれ違う時、目線をあからさまに逸らして避けるあいつに、無性に腹が立った。



俺を、見ろよ。



俺だけを。



体が勝手に動いていた。



噛み付いた痕を見て、ハッとする。



涙を滲ませたあいつに、また、欲情する。



走り去ったあいつの感触に、体が震えた。



あいつの代わりに地味な女ばかりを抱いて、抱いて、そのうちに、俺はあいつの代わりを求める事をやめた。



噛み痕の上から、重なる俺のとは違う噛み痕。



琉玖夜の目が明らかに挑戦的で、笑えてくる。



挑発されている。



正直、琉玖夜と女の好みが被った事がない。



仲間の女に手を出すなんてありえねぇけど、地味子は別だ。



本気で欲しいと思った女は、初めてだ。



多分、ここにいる地味な女に魅入られた男達は、全員そうだろう。



琉玖夜は女にあまり興味を持たず、本気になった事がない。玲は惚れやすい癖に、いつもその時だけで長く本気にならない。春樹はこじらせてるから、女を人間として見てるかすらも怪しい。



琉玖夜を除いて、どこまでこいつらが本気なのかは分からない。



でも、渡すつもりはない。



絶対、手に入れる。

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