第26話

見ると、律樹が少し怖い顔をしていた。



怒りとかではなく、無表情。



初めて見る顔だった。



「律、樹?」



そのまま無言で連れて行かれる背後から、和真の呼ぶ声がするけれど、そんな事を気にする事もなく、律樹はただただ歩く。



「ねぇっ、律樹っ、手痛いっ……」



律樹は何も答えてくれなくて、怒っているのだと分かる。



理由が分からず、不安になる。



連れてこられたのは、校舎裏の木の影。



「律樹っ、どうし……んンっ!」



木を背に押し付けられ、噛み付くようなキス。



「ゃっ、んぅ、ぁ……ふ……」



「俺以外の男のっ、名前っ……はぁ……気軽に呼ぶのは……どうなの? ん?」



「だ、だっ……て……っ、んっ、はンっ……ンンんっ……」



頭の上で両手を拘束されて、押し返そうとするけれど、ビクともしなくて涙が滲む。



痛い。怒らせてしまった。怖い。



「泣いたって、煽るだけだぞ……」



「律っ、律樹、やだっ……」



「嫌? じゃ、和真なら、いいわけ?」



触られるのを拒んだわけじゃない。それに、何で和真の名前が出てくるのか。



私には、律樹だけなのに。



「律っ……ごめっ……許して……」



「じゃ、下着ごとズボンずらして、壁に手ついてお尻こっち突き出して」



誰が来るかも分からない場所で、そんな事をするとは夢にも思わなくて、羞恥で涙がボロボロ零れる。



それでも許して欲しくて、嫌われたくなくて、震える手で言われた通りにする。



「男の格好してても、エッロいな……。声、我慢しててな……」



律樹の冷たい手が、お尻を撫でて、もう片方の手が顕になった前の突起に触れる。



「ふっ……んっ……ぁ……」



「何もしてないのに、何でもう濡れてんの? 和真とこんなになるような話してたの?」



耳元で低く囁かれ、ゾクリとして体が震えた。



「り、律樹のっ、話してたっ、だけっ……ぅ、んあぁ……」



「声出したら……誰か来ちゃうかもよ? こんないやらしい姿、見られてもいいの?」



囁かれながら耳を舐められ、吸われ、背筋が粟立つ。



首を振って否定を表す私の背後で、律樹がクスリと笑う気配がする。



「しっかり足に力入れてな……一気に入れるから……さっ!」



「っっっ!!!?」



後ろからの衝撃に、喉が引き攣り、口をパクパクさせながら酸素を求める。



声を出さないように、唇を噛み締める。



「乱暴にされるのもっ、気持ちいの? 中、めっちゃ、んっ、締まったけどっ……ぁ……」



律樹にされる事全てが快感で、私は漏れそうになる声を抑えながら、律樹に振り返る。



「っ……んな可愛い顔してっ、見んなっ……」



服のボタンを器用に後ろから外し、開かれたシャツの間からサラシがズラされ、直に胸を掴まれ、揉まれて、先端を爪で引っ掻かれると、体をしならせる。



動き始めた律樹に合わせるように、腰が動く。



肉がぶつかる男に耳を犯されながら、必死に唇を噛む。



「んっ、ふぅ……はぁ、はぁっ、ぁ……」



「美都っ、美都っ……俺のっ、だ……俺だけ、のっ……」



「ぁうっ、ふっ……り、つっ……ン……」



激しく強く腰が打ち付けられる度、喘ぎ声が漏れそうになるのを堪える。



荒くなる律樹の息遣いとは別に、地面の砂を踏む音がする。



やばいと思った時には遅かった。



驚きに見開かれた目と、目が合う。



「お前ら、何やって……」



「何って……見りゃ、分かるだろ? はぁ……恋人を、お仕置中だけど? は、んっ……」



「律っ、ダメっ……やっ……ぁ……」



ただ立ち尽くして、状況が飲み込めていないであろう和真が、私を見る。



「あんまっ、美都の可愛い姿っ、見ないでくれる? 見ての通り、今取り込み中、っ、だからっ……邪魔すん、なっ……んっ……」



和真が赤い顔で私を見る。



それでも律樹は動きを止めてくれず、私はなすがままに揺さぶられては、何度も声もなく絶頂する。



「はははっ、ん、イキすぎっ、美都は見られて興奮すんの? 変態だなっ……はぁ……ほんとめっちゃ可愛い……」



和真をいないものとしているのか、全く気にしない律樹に翻弄され、胸と下の突起を一緒に刺激され、また体が激しく跳ねた。



地面を踏む音が激しく鳴り、遠ざかって行った。



和真が走り去った音が合図かのように、律樹が後ろから思い切り突き上げ、より激しく動き始めた。



頭が真っ白になり、声が我慢出来ずに漏れ始める。



「律樹っ、あっ、またっ、イっちゃ……」



「いいよっ……んっ、奥突いてあげるっ、からっ……俺で感じて、はっ、ぁ、やらしい声出して、いっぱい、イってっ……」



何度達したかも分からないまま、乱れ狂う私に、律樹は行為の激しさとは裏腹に優しいキスをする。

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