第六章

第23話

初めて行く水族館は、少し淫らな印象になってしまった。



いつもより格好いい律樹にドキドキしながら、気恥しい中でデートを楽しんでいた。



ふれあい広場で、バレるかバレないかのキスをされ、体が熱くなる。



そして今、大きな水槽の前で後ろから抱きすくめられ、サワサワと体にいたる場所に律樹の手が滑る。



「律樹っ、くすぐったいっ……」



「いいじゃん、ちょっとくらい」



耳元で囁かれ、体を捩る私を見て楽しんでいるようで、クスリと笑う声がする。



「ちょっと、こっちきて」



人気の少ない、少し入り組んだ場所に手を引かれて連れて来られ、壁に背を付けて前に立つ律樹を見る。



「今自分がどんな顔してるか、分かってる?」



「え? んっ……」



壁に手をついて、もう片方の手で私の頬に手を当てて、唇が塞がれた。



甘く優しいキスなのに、いやらしく纏まり着くみたいに、体の芯が火照る様なキス。



「はっ、ぅんンっ、んっ……」



「エロい顔……」



もっとして欲しくて、律樹の首に手を回して、自分からも舌を絡ませる。



隠れているとはいえ、すぐ近くに人が通るのに、こんな事をしていると思うと、羞恥とはまた違う感情が渦巻いていく。



散々貪るようなキスを繰り返し、お互い興奮が冷めやらぬ顔で見つめ合い、そして、笑う。



「なにやってんだろうな、俺ら」



「ふふ、ほんとにね」



最後にどちらともなく、小さくちゅっとキスをして、また手を繋いで歩き出した。



そこからは、普通にデートらしいデートをしたような気がする。



隅から隅まで水族館を楽しんで、あっという間に夕方。



乗ってきた車に二人で乗り込む。



「まだ何処か行くの?」



「着いてからのお楽しみ」



悪戯を楽しむような顔で律樹は笑う。



暗くなった外の流れる景色を見ながら、私は握ったままの律樹の手を握り返す。



少しして、走っていた車が止まる。



少し待てと言われて待っていると、扉が開かれ律樹が顔を覗かせた。



「さ、お手をどうぞ、お嬢様」



「クスッ、何それ」



紳士な対応で笑う律樹の差し出した手を取り、車から降りた。



すっかり日が落ちて、暗くなった細い道を、手を繋いだまま並んで歩く。



周りをキョロキョロしながら、律樹が止まった場所で同じように止まる。



「わ……凄い……綺麗……」



高い場所から街を見下ろす。



夜景なんて、初めて見る気がする。



こんな余裕を持って景色を見るなんて、した事なかった。



「ここさ、結構気にいってる場所でさ。ずっと連れてきたかったんだよな。しかもお前、自分からこういうとこ、来たりしないだろ」



「確かに。私より私を分かってるね」



笑うと、真剣な律樹の目がこちらを見つめていて、ドキリとした。



ゆっくり向かい合うように体を律樹の方へと向ける。



腰を抱かれて引き寄せられる。



「今日の初デートは、いかがでしたか?」



初めての事ばかりで、時間があっという間に過ぎてしまった。



「デート自体が初めてだから、よく分からないけど、多分、楽しかった」



「多分て何だよ多分って」



「驚きとか、新しい発見みたいなものが、多かった、から……」



話している私のお尻が撫でられ、頬や額、首筋にキスが落ちる。



「ちょ……律っ……」



「んー? 何?」



「何じゃ、なくてっ……」



段々手つきがいやらしくなってくる。



撫でられているだけなのに、体の芯が疼いて、腰をくねらせる。



「ずっと触るの我慢してたんだから、ちょっとは褒めて欲しいくらいだね」



キスの雨に流され、抵抗すらしなくなった私に満足したのか、律樹がお尻を撫でていた手を離す。



「場所、変えようか」



先程までの優しい目から、熱を帯びた目に変わり、その目が私を捕らえて離さない。



体がゾクリとした。

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