第20話

中庭のベンチに二人で座り、空を見上げていた。



「いい、天気だな……」



「うん、そうだね……」



静かな時間が流れる。



授業をサボって二人でこうしているのも、なかなか少なくない。



よくないのは分かっているけれど、律樹に握られた手を振りほどいてまで、授業に出ようと思う程、私は真面目ではない。



「この平和な感じは……眠くなるな……」



「本当……。彼女、いい人だったね……」



「あぁ、奏夢が惚れ込むのも無理ないくらい、いい子だよ」



自分から言っといてなんだけど、少し胸がチクりとする。



ちょっと、面白くないな。



「いい人だし、可愛いし、いいとこばっかりだよね……男はみんなああいう子好きになるよね……律樹が好きなのも分かるよ」



「何? ヤキモチ? 可愛い事してくれんのは嬉しいけど、でももう彼女にそんな感情はないよ」



握った手に少し力が込められた。



授業中じゃなければ、今のこの状況は明らかにおかしい。



何せ、学校にいる時の私は、男なのだから。



今更だけど、律樹は私がこの状態なのをどう思ってるんだろう。



「ねぇ、ちょっと気になる事聞いていい?」



「ん? 何?」



「私がこんな感じなの、どう思ってる?」



普段、女の子でいない私を、律樹がどう思ってるのか、聞きたい。



「急にどうした? こんな感じって、男の格好って事? うーん……特に気にした事はないけど、何か理由があってやってんだろ? なら、別に俺がとやかく言う事じゃないよ」



「まぁ、それはありがたいね……私が言うのもなんだけど、彼女がこれって、どうなんだろうかと……」



私がそう言うと、うーんと唸った律樹が何か思いついたように、こちらを向いた。



「よし、じゃぁ、デートしよう」



「……は?」



何故いい考えみたいに目をキラキラさせてるんだろう。



その目をキラキラさせてた理由が、デート当日に分かる事になる。





後日、デートの約束をした日。



どうしようかと、数少ない服とにらめっこしていたら、インターホンが鳴る。



出ると、知らないスーツの男の人が立っていた。



清潔でキチッとした風貌で、所作までもが丁寧で綺麗だった。



「城戸様、律樹様より仰せつかって参りました。御一緒にいらして頂いて宜しいでしょうか」



お迎えが来るとは思わなかった。

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