第19話
熱も冷めないまま、しばらくして、合宿所に到着した。
「うぉーっ! 広ーっ!」
「広いっつーか、でけぇな……」
ほとんどの部員が口をポカンと開けて、合宿所を見上げる。
凄く豪華で、まるで高級な温泉旅館に来たみたいだ。
林田君のご両親が所有する旅館らしい。
なんて、私は今それどころではなかった。
あの後、何度か中途半端に体を好き勝手弄ばれ、ますます熱が体の中で燻っていた。
「唯栞、大丈夫? 酔った?」
奥島君の声。でも、顔を見る事は出来ない。多分彼は、私の表情を見たら気づいてしまう。
彼は、私の事をよく見てるし、知っているから。
俯きながら「少し……でも大丈夫」と呟くと、肩に誰かの手が触れた。
ビクリと体が反応する。
「唯栞、手伝ってくれ」
「あ、うん……」
奥島君に一言言って、私は林田君に着いて行く。
鼓動が尋常じゃないくらい早い。期待に体が震える。
早く。早く。
荷物を運び終えた後、小さなベッドが一つだけ置いてある場所に連れてこられた。
鍵が閉まる音がした瞬間、抱き上げられ、ベッドへ下ろされてキスをされる。それに答えるように夢中で舌を絡め返す。
「んっ、はぁ……おいおいっ、そんなにっ、シたかったのか? ふっ、怪しまれるから、すぐ終わらせるぞ」
「ぁ……早、くっ……」
もう完全にそそり立った彼のモノが、受け入れる準備が万端な私の中へ入って来る。
「ふ、ぁああぁあっ……」
「声っ、抑えてろっ……」
彼の肩口に唇を押さえつけて、声を殺しながら待ちに待った快感に耐える。
激しく揺さぶられながら、物凄く気持ちよくて、抑えきれない声が漏れる。
「ふっ、んっ、ぁっ、きっ、もちぃっ……ぁ、はぁ、ンんっ……」
深く口付けられながら、痺れる体が快感で痙攣する。
達した後も、少しキスが続いたけれど、熱が冷めて冷静になってきた頭が、時間を気にしてしまう。
身支度を整え、別々に部屋を出た。
幸い誰にも見られず、部屋へ戻る。
「おかえりー。どこ行ってたのー?」
女子部屋へ戻ると、最初に仲良くなった同じ学年の女子が声をかけてくれる。
それに答えながら、ふと視線を感じてそちらを見る。
驚きに目を見開く。
あの、小柄で可愛らしい女の子がいる。
出発の時には、他の事に気を取られていて、気づかなかった。
分かってしまった。私を睨みつけるその目で、林田君への好意と私への憎しみが。
物がなくなったり、悪戯されたり、多分彼女だ。
嫌われたものだ。
という事は、彼女は林田君と。そう考えると、胸が痛む。
でも、ここにいるという事は、そういう事だ。
彼女でもない、ただの奴隷。だから、止める権利も、なんの権利も、ない。
何も、ないんだから。
そんな中、練習が始まった。
走り込みを行う部員達のフォローをする為、女子達が各々で担当を分けながら仕事をしていた。
休憩の時間。
キツい走り込みなのに、やっぱり体力があるんだろう部員達は、まだまだ元気そうに女子達と話を弾ませている。
いつもは私一人だし、私を好む人ばかりじゃないしで、申し訳なかった部分もあったからか、普段そこまで深く関わらない部員達まで楽しそうにしているのを見るのが、私も嬉しくなる。
私は汚れたタオルなどを持って洗濯機のある場所へ向かった。
洗濯機まである部屋へ入る。外の寒さが嘘のように暖かい部屋。
洗濯機を回しながら、少し休息を取る為に備え付けの椅子に腰掛ける。
「あの、少し、いいですか?」
扉が開かれ、突然話しかけられてドキリとする。
小柄で可愛らしい女の子。小牧さん。
「な、んですか?」
緊張して変な感じになった私を気にする事もなく、扉を閉めて入って来る。
「私、回りくどいの好きじゃないから、単刀直入に言いますけど、あなた、林田君の事好きなの?」
憎そうな顔して聞いてくる彼女に、何だか笑ってしまう。
「何がおかしいのよ。奴隷ってだけで彼に近づいて、構ってもらって、いい気になって。特別になったつもり? 奴隷なんて、彼女にすらなれないくせに」
これが彼女の本性。可愛らしく大人しそうな普段の態度とはまるで違う。
憎さだけが向けられる。
こんなに人に憎まれたのは、初めてだ。
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